夏の暑さと高い空は、不思議なことに私の心を少しだけ自由にしてくれる。ここ数年は酷暑と叫ばれ外での行動が危険なくらいの暑い日が続き、災害となるようなゲリラ豪雨が発生するからそれどころではないかもしれないかもしれない。でも、毎日のように夕立が続きその雨で濡れた洋服があっという間に乾くような夏だったなら、少しくらい水に濡れることにも抵抗がなくなるし、そうやって過ごした学生時代は夏の思い出だ。

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私にとって、夏は唯一の部活動の時期だった。公立の学校の水泳部に所属していた私は、基本的に部活で泳げるのは夏の期間だけであり、プール開きからプール納めまでが、部活動の期間といっても過言ではなかった。

スクールに通ってたから通年で泳ぐ機会はあるし、プールに入れない期間も同じ部活のメンバーと筋トレをしたり走り込みをしたり部活動自体はやっていたが、部活に所属するメンバーと一緒に泳げる夏はやっぱり特別だった。

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中でも忘れられない思い出が、地方大会の予選会だ。私の通っていた地域では、都道府県レベルの大会の前に、いくつかの地域ごとの予選会が開催されていた。毎年、いくつかの学校が1つの学校のプールに集まり、小規模の大会が開催されるのだが、その年は私の学校での開催でありその準備や片付けが私たちの役割だった。その大会会場としてのプール周辺のアスファルトの暑さ対策として準備したのが、水まき用のホースだった。

ホースなんて、植物に水をあげるときや掃除のとき水圧で汚れをとるときに使うくらいが私の認識だった。その日も、あくまで水を撒いてアスファルトを冷やすためのものだったはずだ。でも、ほとんどのメンバーが水着を着ている状況で水を撒ける、暑い日となれば、誰かしらが自分に水をかけるようにお願いしたり、かけだしたり始めるだろう。その日も例外ではなくて、大会も終盤に近付くころには、ホースを持ち出して水をかけあう遊びが生まれていた。

私は比較的、おとなしい性格だったこともあり、水をかけられることはなかったのだが、最後の最後、全員が集合した状況で水をかけられてしまい、頭からびしょびしょになってしまった。これが、大会の日で夏の気候でなかったら、私も怒って水をかけてきたメンバーに注意をしたと思う。でも、暑い日にかけられた水があまりにも心地よくて、思わずその遊びに参加してしまった。暑さとすぐに乾くという状況が、ちょっとだけ私の心配事をなくしてくれた結果だろう。その大会とその片付けのあと、顧問の先生にも注意されたし、なんでお前まで?という反応をされた。

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普段ならちゃんとできるのに、少しだけ自由になれてしまう。それが、夏の不思議なところだ。暑さは体力以外に判断力も奪うのかもしれないし、高くて青い空が心を自由にしてくれるのかもしれない。どんな理由であっても、自由に振舞える季節は貴重だ。あの大会の日から、あっという間に時間がって、社会人になった今、無意味なことに、先生に注意されるようなことに、全力になれたことを懐かしく思い出す。