職場のバーベキューで見つけたまだ知らない一面。殻を破れた気がした

日差しが強くて昼間が長い。夏という言葉にふさわしいこんなイメージと高い気温は、人の警戒心を少しだけ弱くするのかもしれない。それは、私も例外ではなくて、他の季節よりちょっとだけ自由になれる気がする。たぶん真面目で楽しいことよりちゃんとしていることを好む私にとって、夏がもたらす暑さと強さは大敵なのだ。
そんな私が仕方なく参加した職場のバーベキューで、お酒に酔うみたいに夏に酔ってほんの少しだけ、私の殻を破れた私を知ることが出来たあの夏をきっと忘れない。
私の会社では、社員の子供たちが夏休みの時期に、ご家族も招待したバーベキューが開催されていた。職場では、年下で上司をはじめ先輩方に助けてもらうことが多い私にとって、こういうイベントごとは苦手な類のものだった。それでも、新入社員でルールのわからない最初の年は、同期と話し合って仕方なく参加した記憶がある。
場所の予約や当日の役割分担などは先輩方が決めてくれるが、やはり主催者側で楽しむというよりはお仕事の一環だったように思う。集合時間も少しだけ早くて、テーブルのセッティングをしたり、事前に注文しておいた飲み物を受け取ってクーラーボックスに入れたり、それぞれの役割がある。
社会人1年目では、そういう行動にも、気が付いて動ける子か、何もせずにサボる子なのか、一挙手一投足が見られているような気がして気が抜けなかった。同じように準備している人や、続々と到着するご家族の方が困っていないか、いろんなことを考えて、ダメなやつじゃないことを表現しようと気を張っていた。
そんな状況のなかなか気を抜けない環境ではあるが、いざイベントが始まると、準備大変だったでしょとか、ちゃんと食べているかを確認してくれる上司や、自前の縁日セットを持参して子供たち相手にヨーヨー釣りや水鉄砲の屋台のおじさんを演じ遊び始める役員がいたり、割と自由な感じだった。
最初こそ、最年少の社員としてしっかりしなくてはと思っていたが、自由にバーベキューしたり飲んだり、遊んだりしている先輩社員を見ているうちに、もっと自由にふるまっても大丈夫に思えるようになった。ご家族の子供たちにまぎれて年甲斐もなく思いっきり遊んだそのイベントの後、職場や上司との面談でも少しだけ、自分の個性が出せたように思う。
社会人になるまでは、学生と社会人には大きな壁があって、社会人になったら大人でしっかりちゃんとしないといけないと思っていた。会社でお仕事をする、お金を稼ぐというのはそういうことだと思っていた。
でも、社会人でも大人でも、はしゃぎたい時や日々の些末な出来事から距離を置きたくなる時、ちゃんとできない時がやってくるのだ。時間が解決してくれることばかりではないし、向き合って解決しないといけないことも多い。
でも、あの夏、少しだけ自由になれたあの思い出と気づきは私の中にある。ちゃんとすることに注力しがちな私だけど、あんな風に自由に振舞えた、まだ私にも私の知らない一面がある。日常に行き詰まったら、夏に誘われて私の一面を探しに行きたい。
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