今年の初夏、私は北欧の国フィンランドで大量の汗を流しながらバルト海を眺めていた。「フィンランド」「汗」と聞けばピンと来る人もいるかもしれない。そう、本場のサウナに入るためにフィンランドへ旅をしたのだ。

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私の渡芬はこれが3回目。ちなみに、フィンランドは漢字で書くと「芬蘭」、つまりフィンランドへ渡航することを渡芬という。

1回目は大学の卒業旅行として北欧を周遊した時に訪れた。ずっとフィンランドのテキスタイルや雑貨、また文化が大好きで、憧れの国の1つだった。しかし物価の高いことで知られる北欧諸国、学生がフラフラと旅をするには少しハードルが高い。そんなことを考えていた私に、同じく北欧好きの友人が卒業旅行として一緒に北欧へ旅をしないかと誘ってくれた。運良く、大手旅行代理店が学生限定ツアーとして比較的お手頃に販売している商品を見つけ、念願のフィンランド、その首都であるヘルシンキへの滞在が叶った。卒業旅行ということで季節は3月の上旬だったが、特別寒い年に当たってしまったようで、日中の気温はマイナス10℃程度。ガイドブックなどから収集していた情報よりもだいぶ寒いヘルシンキ滞在となったが、名物のサーモンスープで温まりながら憧れのフィンランドを満喫した。

2回目は数年前の冬に母との2人旅で訪れた北極圏の街、ロバニエミ。サンタクロース村があることで有名なこのロバニエミという街は北極圏に位置する地域。冬至には日が昇らなくなる極夜が起こり、オーロラの観測が可能なオーロラベルトと呼ばれる緯度帯にも属する。この時はまさにこのオーロラを見ることを目的にフィンランドに滞在した。

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2回の滞在を経てますますフィンランド愛が高まった私は、次の目標に夏のフィンランド訪問を掲げる。こうして訪れた3回目のチャンス、今回は旦那との2人での旅行だった。
昨今の円安、かつ相変わらず物価の高い国の1つとして知られるフィンランド。彼は私のように溢れるほどのフィンランド愛を持っている訳ではないので、このご時世でそんな国を旅行先として提案するのには少しだけ苦労したが、「本場のサウナを目指してフィンランドに行かない?」という誘い文句に無事釣られたようで、思いの外あっさり決裁が下りた。私たちは毎週末のように近所のスーパー銭湯に通ってほぼ半日をサウナで過ごしたり、テントサウナが常設されているキャンプ場に泊まってサウナからの川へダイブを楽しんだりと、世間一般よりはちょっとサウナが好き寄りの夫婦だったことが功を奏した。

こうして、「本場のサウナ」という単語は想像以上に彼に刺さり、トントン拍子で旅程も決まった。

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今回のメインは、「Löyly(ロウリュ)」というヘルシンキの公共サウナ。実は過去のフィンランド旅行の際にもこのサウナは気になっていたのだが、さすがに真冬のフィンランドで日本人が外気浴を楽しむのは無理だろう…と訪問を断念していた。

念願叶っての夏のフィンランド、そしてずっと行ってみたかったLöyly。

バルト海の見える沿岸部に立地し、水風呂としてその見えているバルト海に直接入ることができ、更に屋外には多数の整いスペースがあるという、この上ない開放的な空間。いくつかあるサウナ室の1つは半面がガラス張りで、もちろんそのガラスの先には大海原が広がる。
サウナの本場で、こんなにも素晴らしい景色を眺めながら大好きなサウナに入れるという、あまりにも贅沢な状況。もはや「整う」という次元を超え、感動で涙が込み上げてくるが、熱気で火照った体から流れ落ちる熱い滴は、それが汗なのか涙なのか分からない(笑)

そんなことはさておいて、このLöylyは本当に極上のサウナ体験となった。この後も、その他のフィンランドサウナを体験して帰路に着いたのだが、今回は行くことの出来なかった有名サウナがフィンランドにはまだまだある。まだ見ぬサウナに挑む次回の渡芬に向け、今日もせっせと汗を流して働こうと思う。