小学生の頃に将来の夢を絵画にするという夏休みの課題が毎年あった。絵画の課題は選択制だったため他の課題もたくさんあったが、何故か母親に「この課題にしなさい」と言われて、この課題を選択していた。この課題を選んだのはいいものの、将来の夢が無かった。そんな私を見兼ねたのか、母親は私に毎年違う職業を提案してきた。私は絵が描ければなんでも良かったので、その職業を知らずに母親に言われるがままに描いていた。

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中学2年生で、職業体験があった。みんな自分の将来の夢があって、将来の夢がまだ無い子も自分の興味のある分野や、好きな分野の職業体験に行っていた。私は、特に将来の夢が無かった。興味のある分野も特に無かった。

そんな時、小学生の時に描いた夏休みの課題を思い出した。検事や薬剤師、弁護士など色々描いていた。ただ中学生にもなると自分がどのくらいの頭の良さなのかわかってくる年頃なため、到底目指すことは難しいという判断ができた。その中で、これなら目指せるのではないかと思うものが一つあった。それは、看護師だった。そして、看護師に決めたもう一つの理由があった。それは、親友が看護師を目指していたことだった。一緒に職業体験に行きたいという浅はかな理由で私は看護師を選んだ。

実際に職業体験に行くと、お年寄りの身の回りのお世話が多く、何となく、私は看護師には向いてないなと思ってしまった。せっかく見つけた将来の夢が呆気なく無くなってしまった。

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高校3年生になり、大学に行くのか専門学校に行くのか決めなくてはいけなくなった。高校2年生の時に両親が離婚し、父子家庭になった。周りの友達はまだ将来の夢が明確では無いから、選択肢が広がる文系の大学を選んでいる子が多かった。ただ私は、父親に提示された大学に行く条件が、明確な職業を決めてから行けということだった。またしても、将来の夢が無い私にとっては酷な内容だった。でも大学には絶対に行って、キャンパスライフを楽しみたいという強い思いがあった。そのためには将来の夢を決めなければならなかった。この時仲良くしていたクラスの友達が看護師を目指していた。やっぱり看護師かなーという漠然とした気持ちで看護系の大学を目指すことになった。

高校3年生の夏、クラスメイトで看護師を目指していた子が、やっぱり美容師になりたいと美容系の専門学校に方向転換した。衝撃的だった。そして、私も密かに美容師に憧れていたことに気がついた。でも、方向転換する勇気は無かった。とても羨ましかったが、看護師になるために頑張ろうと自分に言いきかせた。

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公立の看護系大学に進学することができた。2年生になると、病院での実習が始まった。お年寄りのお世話をした中学生の職業体験を思い出した。やっぱり向いてないな、でもここまできたら看護師になるしか無いと葛藤の日々だった。

国家試験を突破し、看護師として働き始めてからはやっぱり向いてないと思う日々を過ごしていたが入職して二ヶ月ほどたつと、意外と天職かもという気持ちが何故か芽生えていた。看護師は基本座っていることは少なく、走り回ったりと体力系が多く、座り仕事が苦手な私には合っていた。また、夜勤もあるため、朝が苦手な私にとっては好都合だった。

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現在は妊娠し、看護師を一旦離れた。生まれ変わっても看護師になりたいかと言われると、何とも言えない気持ちだが、あれだけ向いてないと思った職業を続けることができた。

将来の夢を持つことは素晴らしいことだと思う。だが、いろんなことに目を向けてみると、意外と向いていると気づくこともあるかもしれない。これからもきっと看護師を続けていくと思う。だが、まだまだ色々なことに目を向けて夢を持ち続けていきたいと思う。