叶っても叶なわなくても尽きない悩み。でも夢に向かう日々は無駄じゃない

「将来の夢は自分の作ったお菓子で多くの人を幸せにできるパティシエになることです」
小学校の卒業文集に綴った将来の夢。
幼い頃からの夢を叶えたい!と同じ夢を追いかけて10年の月日が経った。専門学校に進学し卒業した後、私はずっと憧れてきた職業に就いた。
今から約 1年半前、新入社員だった私は洋菓子店で働けることにとても希望を持っていた。
初めは覚えることだらけで体力的にも大変だったけれど、夢を叶えられたことへの嬉しさで胸がいっぱいだった。そして何よりもお客様の笑顔を見れることがとてもやりがいに繋がっていた。向き不向きなどを考える時間もない毎日の中で、ただただ追いつこうと必死だった。
しかし1年が過ぎた頃、少しずつ気持ちに変化が表れるようになってきた。
「〇〇さんは何分で終わるのになんであなたは倍以上も時間がかかってるの?」「そんなに時間かかることじゃないから。怠けてるようにしか見えない」と、とにかく周りよりペースが遅いことについて注意されることが増えてきた。けれどそれは今に始まった事ではなく、自分の短所だとよく分かっていた。他人と比べないでよと内心強がってはいたものの、実際に面と向かって言われることで傷つくことも多かった。
仕事内容や人間関係。夢を叶えたその先でやってきた新たな問題に悩む日々。
やりがいや喜びを感じる瞬間は多くあったけれど、職場環境や体力、精神面での悩みが尽きず、1ヶ月間休職させてもらうことになった。
休職期間中真っ先に思い浮かんだのは、この職に就くことを否定せず、パティシエ関係の専門学校へ行かせてくれた両親に就職を喜んでくれた祖父母や友達。
応援してくれた全ての人を裏切りたくないし、夢諦めたんだとか勿体無いなと思われるのが怖かった。
けれど自分の幸せを考えた時、小さい頃からの夢という固定概念を捨てた時、私が本当にやりたいことは何なのか。性格的に向いている職場や職業は?そしてそこに私の居場所はあるのかと答えのない問いを自分に投げかけ続けた。
復職することも視野に入れながら、洋菓子店以外で製菓に関わる仕事を調べたり自分の得意不得意や性格と向きあうことで少しずつ希望が見えるようになってきた。
自分のプライドや周りからの評価を気にしてばかりで、自分の本音に耳を傾けることから逃げてきたけれど、ようやく素直になれたような気がした。
きっと何年も続けることでしか得られないやりがいや喜びは数えきれないほどにあるのだろう。
けれど続けることで幸せになれるかは人それぞれであって他にも職場、職業は沢山あるんだということにも気づけたのだ。
自分の好きなことについて書き出してみたりもした。穏やかな雰囲気のカフェが好きだからそこで働いてみるのもいいかもな。こうして文章を書くことや手書きの文字を書くこと、写真を撮ることも好きだな。
そして色々調べていくうちにエッセイを書いてみたいなという憧れも生まれるようになった。それを仕事にするにはきっとほんの一握りの世界なんだろうな。けれど何者かになろうとしなくてもいいのかもしれない。少しでも私の文章で救われる人がいるのなら、それだけで私も報われる気がするから。
休職期間を経て退職、そして今は再就職に向けて活動している。夢を持つことへ少し怖さもあるし叶っても叶えられなくても悩みや後悔はきっとあるだろう。
けれど夢や目標に向かって努力した日々は決して無駄なことではないし人生の財産になると信じている。
諦めたとか諦めたくないで判断していた私も、成長し色々な経験をする中で考え方や興味が変わった。そして自分のことがもっと見えるようになり、夢や目標も変化していっただけなのだと前向きに捉えることができるようになった。
自由な選択ができるこの世界で自分に素直になることは難しい。それが本音なのか正しい道なのかは自分でもよく分からない。だからこそ自分と向き合う時間を大切にして、先の見えない不安な日々の中でも、生きることを楽しみ続けられる人でありたい。
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