「私はきっと芸能人になるのだろう」と小さい頃は思っていましたが、どういうわけか、平日はフルタイムで会社で働き、週末は趣味でエッセイや絵本のストーリーを書く生活を送っています。

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小さい頃は、『SMAP×SMAP』の人気コーナー「BISTROSMAP」に最年少ゲストとして出演する妄想をして、私のためにSMAPのメンバーが作った料理をカメラの前で頬張り、その様子が全国放送されることを夢見ていました。

車に乗れば、歩道を歩く人たちが「もしかして芸能人の○○じゃない?」と車で移動している私を見つけ、たちまちあたりいったいが大騒ぎ、という妄想を繰り広げ、私は車の中から私を知らない人たちに向かって小さく手を振ったりしていました。

気がついたら洗面所の鏡の前に立って自分の顔を見ていた、というくらい私は人生の大半の時間を鏡を見るのに使ったと思います。

“私は人より顔が大きいなぁ”
“目が離れてるなぁ”
“涙袋が変な形だなぁ”

芸能人になりたかったので、顔にはずいぶん悩みました。
家の外に出れば、目線の先はいつも女の人の顔。

“あの子、顔ちっちゃい!芸能人になれるのに”
“あの人はメイクしたら絶対綺麗なのにもったいない”

出会う人、目の前を通りすがる人の顔ばかりに関心が向いて頭の中は常に「顔」でいっぱいでした。

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たぶん、私が生まれてはじめて心惹かれたものが「女性の顔」だったんです。
だから今、エッセイや童話を書いている原動力は変わっていません。誰かを夢中させるものを作りたい、その一心で作品づくりをしています。
誰かを夢中にさせたい、なんて我ながら図々しいやつだなと思いますが、でもそういう性格に生まれてしまったのだからうまく付き合っていくしかありません。

どこにチャンスが転がっているか分からないので、久しぶりに会った友人や、何かしらのイベントに誘われたときは「今エッセイ書いたり、童話を書くのにハマってるんです」と小さく宣伝するようにしています。あわよくば趣味が仕事になったらいいなと企んでいるのです。

もしかしたら私の人生は、エッセイを雑誌で連載したり、絵本を出版するなど、自分の描いた夢が実現できない人生かもしれません。でも、それは死んでからじゃないと分からないので、今はとりあえず「球数で勝負だ!」という気持ちで自分にできる小さなことで、チャンスをつかもうとジタバタとあがいています。

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「人は顔じゃないよ、中身が大事だと思う」と両親や友達にはウソを言っていました。自分でもそうでありたいと願ってはいたけれど、なかなか信じられませんでした。

でもふと、あと数年で30歳になると考えたとき、顔に囚われている自分がすごく幼稚に見えたんです。高校生のまま、時が止まっていることに気がついて、急いで実年齢にギアを合わせたくなりました。

年齢関係なく、人を夢中にさせることがしたいな、私は絵が得意じゃないから言葉で何かはじめよう。エッセイや童話を書き始めたきっかけは何か特別な熱い気持ちがあったわけではなく、ほんの小さな思いつきです。

書けば書くほど、「全然うまく書けない…才能ないじゃん」と絶望する毎日ですが、まわりの人に宣伝してしまった手前、簡単にやめるわけにはいかず、ある種、強迫観念で日々文章に向き合っています。本当に心折れそうなときは、2年前くらいに登録してすぐに退会した、某人気占い師のオンラインサービスの性格診断のスクショを見て「私は感性を生かす仕事が向いてるんだ…」とやる気をチャージ。

たぶんこれが私に一番向いてることなんだと信じて、いつ花が咲くのかも、そもそも花をつける植物なのかも分からない、私という謎の植物に毎日水を与え続けています。