五感全てが喜んでいた。スマホのつながらない竹富島で学んだこと

激務なOLだという自覚はあった。毎月、周りの友達よりも桁違いの残業をしており、そのせいで心が少しずつ壊れていく音が聞こえていないフリをずっとしていた。
そんな中、友人から勧められた「オフラインラブ」という恋愛リアリティショーを何気なく見始めた。「オフラインラブ」では1週間程度若い男女が自分のスマホを手放し、フランスのニースで恋愛を探す旅に出る、というコンセプトのリアリティーショーである。この番組を見たことをきっかけに「スマホを手放してみる」ことに興味をもった。
僅かな自由時間には、英語で「Doom scrolling」と呼ばれる、ただただ思考停止したままSNSを流し見する行為を続けていた私には魅力的であった。
たまたま沖縄旅行に行く機会があり、そのタイミングで竹富島に行くことにした。運良く、竹富島では中々スマホの回線が繋がらず、スマホを24時間手放すことにした。
朝早くから島を自転車で駆け回り、意外と自分は体力があることに気付いたり、自然の音に耳を澄まして夏を感じてみたり。色んなところから聞こえてくる三味線の音。都会の喧騒では気づけなかったことに心を踊らせている自分に驚いた。
少しばかり贅沢をした1200円の生マンゴースムージー。舌鼓を打った沖縄そば。
浜辺では、星の砂を沢山探した。小さなカニにも沢山出会った。童心にかえったかのようであった。
五感全てが喜んでいた。
大人になったから、お金を使って贅沢もできるけど、子供のようにはしゃげる余力もある自分のこの瞬間を貴重に大切にしたいと思った。
その中でも、忘れられない景色は、夜に星空を見に行ったことだ。
星空をぼんやりみていたら、気づけば1時間程度時間が経っていた。本当に久しぶりに「自分と対話する」ことと同時に「頭が空っぽになる」そんな体験をしたように思える。
自分との対話の中では、中学生の時祖父が亡くなったことがきっかけで、星座・宇宙に関心を持ったことを思い出した。その時の自分の心情、祖父の死に対する向き合い方などを思い出して、中学生の自分を肯定することができるように思えた。
その自分に気づいてからは、瞑想をしようとしていないのになぜか頭も体も空っぽになり、スッキリとは違う「透明」な気持ちに近い不思議な感覚を味わった。
社会人になってから時間を見つけては国内旅行に出掛けていたが、ここまで現地を楽しめたことはあまりなかったことに気付いた。いつも観光地を回り、名物を食べることばかりに集中をしていて、本来の「旅」をしていなかったのではないか。また、自分の中の旅行の価値観がアップデートされた。
竹富島から都会に戻った私は相変わらず忙しなく、スマホを肌身離さない日々を過ごしている。ただ、たまにこのスマホを手放した24時間を思い出しては、なんだかうっとりした気持ちになって、また頑張れる。
一年に一回は、日常を離れてスマホを手放す時間は私にかけがえないのないことを教えてくれる気がしている。
さて、来年はどこに旅行に行こうか。
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