彼女のことは大学生のころから知っていた。共通の友人がいたため、名前や性格は知っていたし、彫刻家として作品を作っていたことも知っていたので、検索すればいくらでも情報は出てくる。しかし、親密になったのは卒業してからのことだった。

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歳は7つ離れているが、話す内容や感受性が驚くほど似ていた。初めてじっくり話したときから、すぐに心を開き合えた感覚があった。私が勧めた本や映画、音楽に対して彼女は必ず目を通してくれるだけでなく、合えば私よりも深く理解し、時には私の知らない視点を教えてくれたこともあった。それは単に知識の深さの話だけでなく、感情や価値観に対しても同じだった。互いに敏感な部分を理解し合える安心感があった。

彼女はポリアモリーで、人を好きになることに正直だ。だが、その感情はどろどろしていなくて、まっすぐで優しい。その姿勢は尊敬に値する。差別を嫌い、理不尽なことに対しては正しく怒ることもできる。

彼女の前の恋人は精神的に不安定だったが、彼女はそれに引きずられず、時には笑い飛ばして対処していた。枕元に包丁を刺されようが、「賃貸だから」と軽く流し、今から死ぬと電話が来ても「ちょっと待ってよ」と冷静に返すような人だ。その柔軟さとユーモアは、普通なら重くなりがちな状況を、少し距離を置きながらも見守る力となっていた。

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私も一時期、精神的に落ち込むことがあり、自傷行為に走ってしまったことがあった。誰にも話せず、ただ孤独に苦しんでいた私に、彼女は静かに寄り添ってくれた。いい意味で重く受け止めず、「何がしたいかじゃない?一旦全部やめてみるのもあり」とだけ連絡を返してくれた。その簡潔な言葉に、どれだけ救われたかわからない。自分を責める気持ちが和らぎ、少しずつでも前を向けるようになったのは、彼女の存在のおかげだ。

また、彼女には両親の言葉に呪われてしまった過去があった。しかし、彼女はその呪いを冷静に分析し、自分の力で解きほぐしてきた。苦しみを抱えながらも、自分を見失わず、他者を受け入れるその姿勢には学ぶことが多い。

ある時、彼女が熱中していた漫画のキャラクターが亡くなったときのことを覚えている。「このキャラが死んだだけでこんなに悲しいのに、あなたが死んだら私すごいことになるだろうな」と笑いながら言った。その言葉に、私たちの間の信頼や愛情の深さが垣間見え、心がじんわり温かくなった。彼女は、日常の小さな出来事や物語の登場人物ですら、心を揺さぶられ、そこから自分の感情や人との関係を見つめることができる。悲劇を、笑っていたいのだと思う。暗い過去をすべて受け入れるのはつらい、少し違った見方をして笑いたいのだ。そういう感受性の豊かさが、彼女の友人としての魅力をより際立たせているのだと思う。

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大人になってから出会った友人は、学生時代の友人とはまた違った価値を持つ。時間や場所に縛られず、自分に合った距離感で関係を築けることが、何より心地よい。彼女と過ごす時間は、互いに刺激を受けながらも安心できる時間であり、人生の新たな彩りとなっている。そして、偶然のように出会ったこの縁を、大切にしていきたいと思う。これからも、互いに自分の人生を尊重しながら、時には笑い、時には真剣に語り合える関係を続けていけたらいいと願っている。必須ではないかもしれないが、尊敬できるところがある人と過ごした方がいいのかもしれない。憧れでもあり、友人であり続けたい。