今でも思い出す。「仕方ない」を受け入れられず壊れてしまった友情

恋には、いろんな感情が付きまとう。友達とは違う特別なただ一人を探すからこそ、相手の方をはじめ相手の周囲の人を信じられないと辛くなる。時に、自分の本音を知り自分が嫌いになったり、親友とぶつかってしまったり。いろんな経験に本気で向き合うからこそ、成長することができるかもしれないが、大切な親友を失ってしまったりもする。
中学生でそのコミュニティ以外の世界を知らなかった私には、恋も大切な感情だったし、友情も守りたかった。でも、スポーツのようにタイムが速いとか試合に勝った方、といった明確な基準で判断できない感情の世界では、感情は説明のしようがなくて納得できないまま、痛みと受け入れるしかなかった。
私が、つらい恋を経験したのは、中学2年生の時だった。好きになった相手は、同じ部活で運動も学力も平均より少しだけ良くて、人当たりのいいモテるタイプの同級生だった。同じ部活だと分かった時には、何人かの友人から紹介してと頼まれたし、実際に紹介も兼ねて何度か数人のグループで帰ることもあった。
近い存在ではあったがモテる人だったこともあり、特別に可愛いとか、モテる側ではないしコミュニケーション力が高い方でもなかった私は、この恋が実るとは思っていなかった。実際に、中学の間に告白することもなかったし、同じ部活の女子の中で唯一同じクラスだった私に与えられたのは、伝言役と相談役だった。
私の恋が実らなくてもよかったのだ。でも、この恋は同じ人を好きになった親友との関係も壊してしまった。おそらく、共通点の多かった私とその彼は、お互いになんとなく補完できる友人だったのだと思う。そのことを、親友に指摘された時には、もう彼への恋心はなくなっていたけれども、その親友の目にはそう見えなかったらしい。
その彼と親友は付き合っていたけれども、親友にはカッコつけたかったのか、ノートを見せたりテスト準備は、私に聞かれることが多かったのだ。クラスの違った親友と過ごす時間は登下校の時間だけだったのだが、同じクラスだった私は登校してから下校するまでの時間同じ空間で同じ授業を受けるのだから仕方のないことだ。でも、中学生の私たちには、その「仕方ない」の受け入れ方が分からなかった。そうして、お互いの仕方ないをどうすることもできないまま、別の高校に進学し疎遠になってしまった。
当時の私には、恋が実らなかったことよりも親友との関係が切れてしまったことの方が残念だった。確かに彼のことを好きだったけどそれはなんとなくモテているし、なんとなく仲が良かったから、選んだにすぎなかったと思う。でも、その親友は、部活の大会の目標とか、将来の不安とかいろんなことを話せた唯一の存在だった。
今、振り返っても、親友の顔は思い出せるけど、彼の顔は曖昧だ。恋と友情、どちらを取るべきなのかは、今も分からないままだ。恋人の枠は1つで、友人の枠は無数にある。誰かのたった一人になりたいと思ってしまうけど、ローテーションされる1枠より、ずっと留まれる関係を大切にしたい。
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