デジタルに支えられた日常から離れて。心を整える秘境のキャンプ場

静岡にお気に入りのキャンプ場がある。
私が仕事で行き詰まった時などには必ずそこへ行く。
静岡市からちょっと西へ行ったところの高速インターで降り、更に北へ少し進む。
すると、途中からキャンプ場を目指す車への看板が出現する。何枚か出てくるその看板に従って進むと例のキャンプ場へ辿り着く。
なぜ看板が出現するのかって?それは途中から電波の途絶えるスマホの地図アプリではキャンプ場に辿り着くことが出来ないからだ。
私がそのキャンプ場を見つけたのはコロナ真っ只中の3,4年前。まさに世の中がキャンプブームで盛り上がり、もれなく私もキャンプにハマっていた頃だった。
私の上司もキャンプにハマっていた影響で、アウトドアの話になると仕事上のコミュニケーションも潤滑になる。もともと学生時代から友人と年に1回程度のアウトドアイベントを楽しんでいた私にとって、格好の機会が訪れた。
そんな訳で、「キャンプに行きます!」といえば比較的休みが取りやすい環境で仕事をしている時期があり、休みを取ってはキャンプを楽しんでいた。そんな中で見つけたのが「デジタルデトックス」の出来るキャンプ場。
その道中からスマホの電波は入らなくなり、以降は山を下るまでそのまま。例えばキャンプ場に2泊するとなると、そのまま少なくとも30時間以上は実質外界との連絡手段が絶たれる状況だ。
普段休みの日でも何か仕事でトラブルや相談があれば鳴っていた私のスマートフォン、それが強制的に電波が入らず鳴らなくなるとくればありがたい話だ……と一筋縄ではいかず。
実は、初めてそのキャンプ場を訪れた時には、各種SNSをだらだら見たり、オンラインで読める漫画を読み漁ったりすることが出来ずに暇を持て余してしまい、今までの自分のキャンプスタイルはなんだかんだデジタルコンテンツに支えられた暇潰しだったということに気付かされた。
それでも帰ってから暫くして、少し離れたところに見える渓谷の景色が綺麗で、水回りの設備も整っており、かつあまり人が多くないため静かに過ごすことのできるこのキャンプ場のことが忘れられず、気付いた時には再び訪れる計画を立てていた。
二度目に訪れた時、私はもう暇を持て余すことはなかった。スマートフォンの画面を眺めていた時間を、焚き火の炎をじっと見つめたり、鳥のさえずりに耳を澄ませたり、ただただ静かに本を読んだりする時間に変えた。すると不思議と、頭の中の雑音も消え、仕事で抱えていた課題の解決策がふと浮かんできたり、新しいアイデアが生まれたりした。
電波の通じないこのキャンプ場は、私にとって、単に美しい景色を楽しめる場所ではなく、自分自身と向き合うための大切な「場所」になった。そして私は、これからも時々、この場所でデジタルから離れることで、心を整え、また日常を頑張ろうと思えるのだ。
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