友達を作るって難しい。恋人のように明確な約束があるわけでも、お別れがあるわけでもない。

お仕事を通じての関係なら毎日顔を合わせることもあるけど、お互いの都合で数年間、会えない時だってある。それでも、相手を思う気持ちに嘘はないし、会えばちゃんと仲良くできる。恋人のようにお互いについてなんでも知っているような関係は望んでいないからこそ、好きなことだけで薄い絆を結べる関係だ。

でも、本当にお互いに気を許せる友達を作るのは、大人になると難しくなるような気がする。小さい時は誰とでも仲良くすることができたはずなのに、失敗して傷ついて、そんなことを繰り返すうちに、人間関係に臆病になってしまったと思う。

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私が、友達と呼べる相手のほとんどは、学生時代に出会った人たちだ。一番の親友は、中学生からの友達で、お互いの家も知っているくらいの関係だ。それ以外の友達でも高校であった友達が多くて、大学で出会った人の中で関係が続いた相手はあまりいない。

高校まで家から通える場所を選び、大学は勉強したいことを選んだはずなのに不思議だ。もともと人見知りの私は、世界が広くなった分、相手も見えない部分に警戒してしまったのだと思う。そして、社会人になってから友達になるようなことはなくなってしまった。

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そんな私だが、転職した今、たまに会う前の会社で出会った人たちがいる。男性の多い業界で、同い年で同性が4人も集まった特殊なチームだった私たちには、どこか特別な絆があったと思う。人の出入りが激しいこともあり、同じチームでも一緒にお仕事をしたわけでもなかったが、ランチの時におしゃべりしたり、時には相談したりされたり。そんな関係が続き、それぞれが転職や結婚産を経た今でも、時間を合わせて会う関係が続いている。

話す内容は、相変わらず、他愛ないおしゃべりやちょっとした相談事など、どうでもよいようなことばかりだが、銀座や恵比寿のちょっとおしゃれなお店に挑戦して、気楽なおしゃべりができる関係は社会人となった今、貴重な存在だ。

お仕事中の私はどうしてもタスクや締め切りに追われてしまい、ストレスで逃げ出したくなる時がある。そんなときに、ふと行きたいお店や食べたいものを共有できる関係が、私を助けてくれている。

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彼女たちにもそれぞれ、言わない悩みがあるはずだ。お仕事のこと、家族のこと、お金のこと。楽しいことだけを話すわけでもはないけど、暗黙の了解で話題にしないこともある。学生だった時の私は、相手のことをたくさん知らないと仲良くはなれなかったけど、社会人になった今、話したいことだけを共有できる友達がいてくれることがすごく嬉しい。悩みを解決してくれることはないが、ほんの少しの間、悩み事を忘れさせてくれる。

一度離れてみるとそれほど悩むことではないときもあるし、解決策が思いつくこともある。そんな薄い関係を作れるようになったのは、私が少しだけ大人になったということだと思う。