皮肉屋の私が「些細な事に一喜一憂できる」友人に学んだ楽しく生きる術

学生時代は恥ずかしながら尖っていたので、ジョークを交えながら皮肉や皮肉を言い合うのが真のコミュニケーション、みたいなインテリ大学生の真似事をして過ごしていました。その時にできた友人たちも当然そういう皮肉屋ばかりで、今でも顔を合わせると国際社会がどうだとか、政治がどうみたいな話ばかりしています。
ですが私は仲間内では唯一、うつ病で会社を休職して転職した身でして。コンサルだとかメーカー営業だとか、そういう「勝ち組」みたいな世界とは縁を切って以降は、彼らといると肩身が狭いなと感じる事が増えてきました。
という事で新しいコミュニティを求めていたのですが、休職明け辺りからハマっていた、とあるゲームのSNSコミュニティに拾っていただきまして。今では基本的にそのコミュニティの友人たちと、月二回ほど遊ぶ仲となりました。その中の一人に私より15歳年上の女性がいるのですが、彼女が本当に光のような方で、今回は彼女の話をさせていただきます。
彼女は「些細な事に一喜一憂できる人」です。どれくらい些細な事かというと、通勤で運転していた際に五回連続信号に引っかからずに会社に着けただとか、パン屋に入ったら欲しかったパンが丁度焼きたてで提供されたところだったとか。確かに嬉しいけれど、あえてSNSで発信する事でもないかなという内容も、彼女は嬉々としてSNSで呟いています。まるで、母親に楽しかった事を報告する小学生のように。初めは彼女の事を、何もかも発信しないと気が休まらない人なのかな、と少し冷めた気持ちで眺めていました。ですが、次第に彼女の報告が日々の楽しみになってきました。
世界を穿った見方で眺めていた皮肉屋の私にとって、彼女の目から見る世界はとても新鮮でした。コンビニの増量キャンペーンのためにいつもより30分早く起きて、お目当てのスイーツを朝からゲットしていた彼女を眺めていると、原価や利益の事ばかり考えていた自分が恥ずかしくなってきました。期間限定商品なんて恒常にしない時点でタカが知れてる…なんて考えが吹き飛ぶくらい、彼女はコンビニやファストフードの期間限定商品の事前情報に喜び、実際に食べて幸福を報告していました。羨ましい、と思いました。彼女のように生きて、彼女のように世界を楽しみたいと。そこで、私もコンビニやファストフードの公式アカウントをフォローしたり、彼女が買ったという商品を買って食べるようになりました。
結果として、すごく、世界が明るくなったような気がします。一つ大きな事は、期間限定商品を追っていると、季節をとても楽しめるという点です。なんだかダラダラ生きていたら気づけば秋、なんて年月をしばらく過ごしていましたが、最近はお月見だとか栗やさつま芋の期間限定商品の予告を見て、秋が来るな、と認識したり。夏の終わりを惜しみながらマスカット味のジュースを飲んだり。彼女が「ご褒美に○○を買う」という思考なので、それを取り入れた結果、生きている色んな日にご褒美が待っていて、呼吸がしやすくなりました。
正直以前は、政治やニュースを学べば学ぶほど世界に失望ばかり覚え、大人になるにつれ憂いは増すばかりだと悲観していました。だけど今は、15歳年上の友人に楽しく生きる術を学ばせてもらい、日々を前向きに生きられています。小さな事に一喜一憂出来る。それは案外特殊スキルのようなので、これからも磨いていけるよう頑張ります。
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