「だいたいねー、26歳くらいになると第一次結婚ラッシュが来るよ!それで、30手前で第二次!そんで離婚した人が再婚する30中盤で、第三次!!」

数年前、会社の先輩(35)は、飲み会で楽しそうに私(当時22歳、新入社員)に教えてくれた。
第一次と言っても、4年後。当時は大学時代の友人のツテで商社マンとの合コンに明け暮れていた私には、まだまだ先の話。友人と理想の結婚話はするが、どこか現実味がなかった。

が、先輩(35)の話は本当だった。

26歳を過ぎた途端、インスタはスクロールのたびにプロポーズの写真(夜景がきれいなホテルの部屋をバックに、赤い薔薇の花束持ってるやつ)もしくは入籍しましたの写真(婚姻届の用紙に、婚約指輪と結婚指輪を団子みたいに並べるやつ)ばかり。
仲のいい女友達も、続々と結婚していく。
それも、「妥協しちゃったよ」なんて笑いながら。

みんな、どうしたの?この前まで
「30で一本(年収一千万)は絶対でしょ!!」
「ハゲなさそうなイケメンがいい!!」
とか言ってたじゃない。
急に「結婚って、妥協だよ」なんて悟った顔で言わないでよ。
これから60年くらい一緒にいるのに、その人でいいの?

私にはどうしても結婚=幸せのライフイベントだと思えない

いつのまにか、周囲の友達の苗字が一斉に変わっていく。
それはまるで女たちのオセロゲームのようだった。
おめでたくて、うれしくて、だけど少し、ほんの少しだけ、不気味だった。

もちろん結婚して、妊娠して、出産して、子育て、、とこの後にくるライフイベントから逆算したら理にかなっているのは重々承知の上だ。

だけど私には、どうしても結婚=幸せのライフイベントだと思えない。
その理由は、明白だった。

私は、「夫婦」の不正解の例しか知らない。
幼い頃、両親が離婚しているからだ。

「両親」をテーマに連想ゲームをするとしたら、「喧嘩」「泣き叫ぶ」「怒鳴り声」「家の物が飛び交う音」のような言葉たちで頭が埋め尽くされてしまう。

女友達の実家の食卓で目の当たりにした驚きの光景

少し前に、女友達(ここでは皐月ちゃんと呼ぶ)の実家に遊びに行ったときのこと。皐月ちゃんも結婚したばかりで、旦那さんと新居に引っ越すまで少しだけ実家に暮らしているとのことだった。
皐月ちゃんと、皐月ちゃんの両親と同じ食卓を囲む。そこには、驚きの光景が広がっていた。
お父さんはお母さんが大好きなのを隠さず伝え、お母さんも照れながらもお父さんの気持ちに応えている。当然喧嘩もない。

まるで都市伝説を見ているかのようであったが、それと同時に皐月ちゃんが結婚に対しポジティブに捉え、タイプではないけれど良い家庭を築けそうな人、と結婚したことに心底納得した。

皐月ちゃんと私は、決定的に違うんだ。

今更嘆いてもしょうがない悲しみなのか怒りなのかわからない感情が、胸にこびりついて離れない。

自分の幸せのために、結婚しない。そんな選択肢が存在する世の中に

結婚する幸せを知らない私が、人と築いていけるわけがない。
私はきっと、オセロでもひっくり返されず、ただそこにあり続ける。
「私は、結婚したくない」

結婚しないという選択をした女性に、世間の風当たりは厳しい。
「行き遅れ」なんて呼ぶジジイもいるし、
「理想が高いのよ」なんて言うババアもいる。
だからもし私が将来結婚するとしても、そんな世の中から身を守る手段としてするのだと思う。本当にくだらないけれど、社会の歯車として仕方がないのかもしれない。

自分の幸せのために、結婚しない。
そんな選択肢が、存在する世の中であり続けますように。

あと、「行き遅れ」なんて呼ぶジジイどもが、乗りたい電車に数本乗り遅れますように。