なんとなくネットを見ていると 目に入る広告。
「これであなたもぱっちり二重に」「切らない二重整形」もう何度見たことだろう。
コロナで家にいることが増えて、外に出かけにくくなって 以前にも増してネットを見ている。
どのページを見ても目に飛び込んでくる広告。
はぁー。誰もいない部屋でため息をつく。

お人形さんのように可愛くて、明るい性格の妹

私には 1つ年下の妹がいる。
純日本人顔、脂肪で重たい一重。まるで平安絵巻に出てきそうな顔の私に対し、妹は二重で キュッとした小鼻。まるでお人形さんのようでかわいい。
姉である私ですら 全世界にかわいいと叫んでしまいたい。

性格もまるで違う。
明るくて社交的、友人も多い妹。
地味で一人でいることが 好きな私。
母よ、なぜこんなにも産み分けたんだ!

小さい頃は、親の愛情に包まれて育ったおかげで、10歳まで自分が可愛くないことに気がつかなかった。ある意味ラッキーだったと思う。

妹と顔が違うのはお母さんのせいだと ひどく罵った

転機は旅行先で訪れた。
たまたま見つけたオーディションのポスター。
ひそかにテレビの向こう側に憧れていた私は、母に受けてみたいとぶつけてみた。
かなり強めに「だめ!」とだけ叫んだあの顔が忘れられない。今までみたことがない母の顔だった。
私は あの時、自分が可愛くないことを自覚した。ずっとかわいいと言い続けてくれた母によって。

気づいてしまってからは もう遅い。今まで着ていた洋服を全部捨てた。
地味な色のパーカーとジーンズだけを履き続けた。
自分のせいだとは知らず、かわいい服を買ってくる母に八つ当たりした。
妹と顔が違うのはお母さんのせいだと ひどく罵った。
母は 言い返すこともなく「ごめんね」とだけ言った。
あの時の顔もまた 脳裏にこびりついて離れない。
私は 謝ることができなかった。いまだに後悔している。

すれ違い様に「一重だったわ」あなたに迷惑かけてますか?

時が経ち、わたしは中学生になった。
制服という誰でも似合うものを手にし、私服から離れられた。
正直にいうと嬉しかった。もう似合わないと悩むこともない。
喜んでいたのも束の間、新たな問題に直面するのである。

クラスメイトと何気ない会話をしているとき、ある男の子が言った。
「昨日イオンにいただろ。二人で歩いてた。女優とお笑い芸人みたいだな。」
確かに前日、家族でショッピングモールにいた。
心に「グサリ」と刺ささる音がした。泣きそうだった。
「失礼ね!」とやっと言葉を振り絞ると、一目散に廊下に飛び出した。

それから何年か経ち、上京。
友人のバスケの試合を観に行った時のこと。
狭い通路を通っている時、向かい側から歩いてきた男性の会話が聞こえる。
「あの子可愛くない?」「あぁ確かに」
彼らが観ている先には 私しかいない…「神様ありがとう!」と思った矢先、すれ違いざまに 「そうでもなかったわ」「一重だったわ」と聞こえた。
もう泣かなかった。代わりに 怒りが込み上げてきた。
あなたに迷惑かけてますか?あなたが何かしてくれますか?
その言葉で傷つく人がどれだけいるか分かりますか?

みんなにも考えてほしい。
二重にする必要ありますか?
誰かに言われたからなんて そんな理由で自分を傷つけないで。
ありのままを愛してほしい。

二重じゃなきゃいけないなんて 誰が決めたの?