「人は誰だって、誰かにとっての大切な人なのよ。」
小学三年生の頃、クラスメイトに意地悪をされ、帰宅して早々に愚痴をこぼす私に母がかけたセリフである。

「みんな誰かにとっての大切な人」。小学生の時に聞いた母の教えが私の軸だと確信した

「ママはね、あなたのことが大好き。いつだってあなたの味方よ。だからあなたを嫌な気持ちにさせたその子には腹が立つ。だけどね、その子のママは、ママがあなたを愛しているのと同じように、その子のことが大好きなの。だから、もしあなたが仕返しにその子に嫌な態度をとったら、嫌な思いをするのはその子だけじゃないの。その子のママも悲しくなっちゃうのよ。」
まだまだ純粋だった当時の私に、母のこの教えは相当な威力をもった。
「じゃあ、大切な人の大切な人は、大切な人?大切ってつながっていくんだね、じゃあ世界は大切で包まれてるんだ!」なんて、習ったばかりの世界地図を広げながら心の底からそう思った。以降、人間関係で悩むたびに、私の心のよりどころとなっている出来事である。

就職活動は、今後どのような仕事をして、どう生きていくかを必死に考える期間となった。その時改めて、この“大切の連鎖”の考え方が自分の軸だと確信した。

「みんな誰かにとっての大切な人。大切な人の大切な人は大切な人。だから、人々を支えるモノやサービスを作ることで世界中をハッピーにしたい。」
こんな考えを面接で伝えると、社会の荒波を知らない学生の夢物語だ、と言わんばかりに鼻で笑う面接官がいた。
でも、そんな反応をされても「この人も、誰かにとっては大切な人。そしてこの人自身にも、大切な人・守りたい人はいるんだ。」と思うことで心を強く保てた。

見えないウイルスに怯え、危機が世界を襲った2020年。大切な人が今、苦しんでいる

何社も面接を受け、この考えにもっとも興味を持ち、共感してくれた会社とご縁があり、入社することになった。私は今、経営コンサルタントとして働き、複数の会社の成長のお手伝いをしている。

世界には、世界をより良くしようと懸命に努めている会社がたくさん存在している。私の仕事は、そのような会社の成長を促すことで間接的に世界をよりよくする一助を担える仕事だ。もちろん、仕事をする上では様々なジレンマや億劫なこともたくさんあるが、この仕事には私自身、非常に強い誇りをもっている。世界中が見えないウイルスにおびえる中も、社会を想って奮闘する会社の生命力は強く、エネルギッシュであることを実感している。

2020年は、誰もが予想しえなかった危機が世界中を襲った。人々のライフスタイルは様変わりし、仕事を失い、経済的に苦しい思いをする人々もたくさんいる。街を歩けば、つい最近まで活気にあふれていた飲食店がシャッターを閉め、閉店のビラを貼りだしている。目に見える変化だけではない。不景気による消費マインドの低下は、ほぼすべての企業に影響を与えているといってもいい。

幸い、私や家族、そして周りの友人も、多少の影響はあったようだが、仕事が極端に減ることはなく、給与が大幅にカットされることもなかった。
しかし、直接かかわりがなくても、友人の友人が苦境に立たされているという話はこの一年で数えきれないほど耳にした。「大切な人の大切な人は、大切な人」。大切な人が、苦しんでいる。まさに今はそんな状況なのだと胸が痛かった。

この世の全ての人が”大切の連鎖”の一員だから。私は働く、だからみんな、大丈夫だよ

私にできることはなんだろう。そう考えた時、私には仕事だ、と思った。
私のお客様は、みな、社会のことを思っている。そんなお客様と共にたたかうことが、間接的に大切な人を応援していることになるのだ。

だから私は働く。みんな、大丈夫。きっと未来はよくなるから。

この世の全ての人が、誰一人漏れることなく、”大切の連鎖”の一員なのだ。それだけで、自分にも他人にも、優しくなれる。“今”を作った過去も、“今”が作り出す未来も、まるごと愛せる気がする。
夢物語なんて言わせない。私は働く、だからみんな、大丈夫だよ。