ずっと私の夢だった海外での生活を叶えるため空港へと向かう道中。
緊張と期待を抱える私の隣で、見送りに来ていた母は私に彼氏がいないことを気に病んでいた。

夢の仕事を手に入れられるかどうかが大事な私、彼氏がいないことを気に病む母

今は私にとって恋愛の時期じゃない。
ようやく掴みかけた夢の仕事を、本当に手に入れられるかどうかがかかっている、そんな大事な時期なのだ。今の私に他のことを考えている余裕はない。
そんな時母親に「男は年収、女は顔」と言われたら、私の心はざわつき、落ち着かなくなる。「誰だって、結婚以外にも幸せになる道はあるはず」と大声で叫び出したい衝動に駆られる。

母親が私のことを褒めるつもりでこの言葉を言っていることはなんとなくわかっているが、正直全く喜べない。これが褒め言葉になるのなら、今の私の努力はなんの意味もないじゃないか。そう考えて1人頭を抱える。

母にとっての私はきっと、実家を出た10年前の私で成長が止まっている

親子とはいえ、私とは違う考えを持つ1人として母親を捉えられれば、私の心はもう少し穏やかになるのだろう。
しかし、会うたびにこんな結婚の話や褒め方をされると、正直会うことをためらう様になってしまう。他人なら、自分とは考えが合わないと思えば2度と会わない選択が出来るが、母親となるとそうはいかない。愛を持って私を育ててくれた母親であり、私のことを思って言葉をかけていることをわかっている。私も母親が嫌いなわけではない。

ただ、ちょっと冷静になって、もっと客観的に私を見て欲しい。
私が今、何に夢中で何を欲しているのか。母親にとっての私はきっと、中学生・高校生くらいで成長が止まっている。進学のために実家を出たのが高校卒業した時だったので、妥当なのかもしれない。実際はこの10年で私はさまざまな世界を見て、聞いて、学んだ。さまざまな人と出会い、考え方は大きく変わった。10年前、まだ幼かったあの頃の自分の発言を思い出すと、未熟さと軽々しさに耳を塞ぎたくなる。
完璧に私を理解して欲しいわけではない。ただ、ちょっと立ち止まって今の私を見て欲しい。母の記憶の中にある、10年前の私ではなく。

直接言いたいけれど…どうか夢を追いかけるわがままな娘を許し、気長に待っていてほしい

そう直接母親に言いたいけれど、その場になると感情が昂りすぎてうまく言葉にならない。それに、昔から母親に話を遮られるとそれ以上言葉が出てこない。母親が感情的になると、悪いことをしたみたいで罰が悪くなり、つい本音を隠してしまう。そんな自分のせいで、母親との関係が勝手に気まずくなっていることはわかっている。

だから、いつか母親がこれを読んで、私の気持ちに気づいてくれたらと思う。
今私がやりたいのは、恋愛や結婚ではなく、自分の夢に挑戦すること。
今私がかけて欲しいのは「可愛い」の褒め言葉ではなく「がんばったね」の労いの言葉。
今私が毎日思い描くのは、幸せにしてくれる誰かの姿ではなく、幸せを掴み取りに行く自分自身の姿。

まだしばらく結婚を考えるまでに時間がかかりそうだし、そもそも結婚出来るのかわからないけれど、どうか夢を追いかけるわがままな娘を許し、気長に待っていてほしい。