恐ろしいことに気付いた。彼がめちゃめちゃに可愛がってくれるのをいいことに、めちゃめちゃにワガママしてるということ。そして、その“ワガママを聞いてくれる”彼氏が大好きなこと。
私のことを可愛がってくれるなら彼は誰でもいい!と思っていることにも気付いた。ある程度の要望やワガママは必要だと思うけれど、でも私の場合“彼女の可愛いワガママ”の度を越している気がする。
聞かせているのはワガママだけじゃない。私の話ばかり聞かせてる。今日はこんなことがあって嫌な気分になった、あそこ行きたいって言ったけどやっぱりこっちがいい、6年前の今頃はこんなことがあって今でもトラウマだ、将来こんなことが不安だ、今日は疲れたからやっぱり早く帰りたい、などなどワガママと楽しくない発言ばかり浴びせている気がする。
そして相手に興味がない。彼に何か話をされても、薄っぺらい反応を見せるか自分の話へ乗っ取る。一応気になるトピックに関しては深掘りして形ばかりは聞くけれど、心の中は「そんなことよりも私の話を聞いて?」「私の要望を満たして?」という思いでいっぱいだ。その思いが彼のことまでも支配してる。
女王様と家来みたいじゃない?
私と彼の関係性ってなんなんだ。
私はみんなの愛を「独り占め」して、可愛がられたいんです!
ある日のデートで、彼の全てにイライラしたことがあった。寝癖ついてますけど? どうしてモバイルバッテリー持ってないくせにスマホ開くんですか? 位置情報も通知もオンだし、私に色々調べさせるつもり? なんで飲み物持ってきてないの? なんで朝ごはんも食べるなり買うなりしてないの? ひらひらのスカートとピンヒールはいて髪の毛も巻いてきた彼女のこと、どれだけ待たせるつもり? 私の脳内は、女王様以外の何物でもない。
生理前だと悟ったのは、会って30分後。彼にも元カノがいるから生理には耐性があるはず、っていう一縷の望みにかけ「周期が乱れた生理前だ」と謝罪も添えて伝えてワガママさせてもらった。「顔色も悪いしバッグ持つよ」って言ってくれたけど断った。彼なりの気遣いなのか、平常運転の日も自分で持ちたがる私にしつこく言ってこなかった。でも、本心は違う。持ってほしかった。
それから、付き合う前に「割り勘が良い」って言ったけど、カッコつけてたに決まってるじゃん。コーラとポップコーンくらいおごってよ。私キャラメル大好きなんだよ。言えないけどさ。でも、実はいつも持ってほしいんだよ。時々はおごってほしいんだよ。そうやって、可愛がられたいんだよ。
私がワガママになったのは、きっと女王様気質の「母の影響」
こうやって素直に言えないのは、母親が娘の私よりも自分のことがずーっと可愛かったことに起因する。可愛がってもらった記憶がない。だからずっと、みんなに可愛がってほしいって思ってきた。みんなに、私のこと見てほしいって思ってきた。でも、味方がいなかった。誰も見てくれなかった。だから、心を閉ざしてブレーキをかけて生きてきた。
母は、一番頑張っているのも、一番褒めてもらうべき対象も自分だった。娘が転校先でイジメられようが、スイミングスクールのコーチから理不尽な扱いを受けようが、母は自分が一番大切だった。
多忙な夫に褒めてもらうため、家事も子育ても全部自分でハンドルを握り、そのストレスでいつもイライラしていた。たまにまともに話してくれる時は自身の過去の栄光ネタばかり。だから私も母に倣い先生に褒められた報告をした。恐怖政治をしていた母にわざわざ話しかけたのは、母みたいになれば私のことも認めてもらえると思ったから。私も栄光ネタを話せば、褒めてもらえると思ったから。すると「そんなこと出来て当たり前だ」「先生は大げさだ」「第一自慢話は絶対にしない方がいいよ?」と母は言った。
長女の私にとって、当時の唯一の先輩が言うならごもっともです。私は金輪際“自慢話”はしません。私が出来ることは、皆も出来ることだったんですね。
おまけに母は、いつも妹の味方だった。容量がいい妹との喧嘩、母による判決は基本私が敗訴。それでも私は母を追い続けた。自身を一番褒める母を完コピすれば、きっといつか私も褒めてもらえると思った。注目されて、愛されると思った。それでも、転校先の先生もコーチも家族も誰も私の話を聞いてくれなかった。
頑張っても褒めてもらえない。味方もいない。そうやって心を閉ざした私に一番欲していたものを与えてくれて、満たされなかった寂しさを満たしてくれるのは彼氏だった。自分の気持ちにブレーキをかけ続けていい子にしていても、どれだけ頑張ってももらえなかったものを彼氏が沢山くれる。だから、彼氏という存在が大好き。
でも、無条件に可愛がってくれて、私に興味を持ってくれて、いつも自分の味方になってくれる人が現れた時の対応を学ばなかったから、受け取り方がわからない。適度なワガママもわからない。だからひどくワガママしているような気がする。だから私の話ばかりな気がする。
それから、愛や褒め言葉を与えられた経験がないから、私も与え方がわからない。せめてもの参考資料は、母。だから私も過去の栄光を語り、みんな出来るに決まってるから私の価値観や思考回路、私レベルの知識量を要求した。彼に出来ないことや知らないことがあると、上から目線でレクチャーするか幻滅する。だから私は、母のような女王様になってしまう。
あなたのことはどうでもいいの。とにかく私を可愛がってくれればいい
私もあなたのことが好き。あなたの好きなとこはね、私のことが好きなとこ。だからね、あなたにどんな過去の栄光があろうが、何が得意だろうが、関係ないの。とにかく、私のこと可愛がってくれればいいのよ。
付け足すと、私のタイプじゃないとセックスは出来ないよ。ちなみに私のタイプは目が細くて二重でホリが深くて鼻が高くて、身長は最低でも175cm。マストなのはハスキーボイスと、ハリウッドスターか韓国アイドルであること。そんな王子様が現れたら、どんなお姫様にも負けないくらいフェロモン出しまくって誘惑しちゃうから。
わかってるよ、こんな女王様なんていつかフラれることなんて。こんな女王様になんてハッピーエンドは来ないなんて。きっと女王様は家来の一人や二人がいなくなっても、きっと何も変わらないだろうな。自分は悪くないと思うんだろうな。
だから、心にブレーキをかけて好きにならないようにする。心にブレーキをかけることは私の得意技だ。
お付き合いにおけるドライバーは、私。私の好きにハンドルを切り、私がアクセルを踏み込んだり失速させたりする。私が気まぐれでガソリンスタンドに寄ってガソリンを少し入れたり、時には満タンにしてみたり、時々洗車してみたり。でもガス欠になったら対応は彼氏に丸投げする。自分の好きに彼氏を酷使し、2人の空気や関係が故障したら彼氏に責任を取らせる。
絶対に自分の失敗を認めないとこ、プライドが高すぎるとこ、自分の思うがままにするところ、恐怖政治を敷く女王様みたい。関係がが改善して親友みたいになった今でも母の完コピを続け、母のことを追いかけ続けてる。母の呪縛から解放されたい。
承認欲求を拗らせてこうやってがんじがらめになってる私のサポートを、めちゃめちゃに可愛がってくれる彼氏に頼みたいな。でも、私の育ちの問題だから私が抱え込むべき議題だよね。女王様はいつも強いもん。女王様気質の今は強くいなきゃ。弱みは見せちゃだめ。生理前でもだめ。
でも、私のこと可愛がってね。時々荷物持ってくれたら嬉しいな。時々でいいからおごってね。