控えめに言って、私の顔は可愛くない。
顔の丸さ、二重になりきれない右目、150cmも満たない身長、短い足、私を構築するパーツ全てが不格好だ。
だけど私は愛されたかった。可愛い女の子が言葉を発さなくてもその場に居るだけで周りの色を染められるように、私も人を彩れる人になりたかった。そう思った時からだろうか、私は「ネタキャラ」として生きてきた。
自分をネタにして売る日々、そうして私は人からの愛を感じていた
私を構築する全てのことを自虐した。自分を削れば削るほど、みんなが笑ってくれた。
誰も周りにいなくても、ネタを考えていたし、SNSも毎日チェックしていた。
正直、無理ばかりしていた。けど、私は周りに色を与えている気がして嬉しかった。
高校生の時には、クラスの中心に立つ存在だった。誕生日にはクラス全員からパイ投げされたし、大量のお菓子が入った段ボールももらっていた。私は愛されていた。
この子には何を言っても大丈夫。ネタにすればするほど味が出る。
そう思われてることに対して、その役目を演じ切っていた。どんなに嫌なことを言われ傷ついても笑っていた。今更ネタキャラを拒絶できるほどの自我なんて無かったから。
けど、頭の片隅に「ずっとこのままなの?」と私を冷ややかな目で見る私も居た。
そんな私に、大学で気を使わずに過ごせる友達ができた。(仲良くなったきっかけは忘れてしまった。)
とにかく人に興味を持たない子だ。誰が幸せになろうが、不幸せになろうがどうでもいい。自分が幸せになれることだけに集中していた。そして何よりそのままの私を好きだと言ってくれた。私は彼女の考えが好きだし、一緒に居て心地が良い。
私たちは大学4年生になり、就職活動が始まった。
皆が内定を貰う中、私はまだ内定を貰っておらず、焦っていた。
私のネタキャラは誰のためにあるんだろう?
そんな時に、男の先輩から「飲みに行こう」というお誘いがあった。
いつもなら参加して、笑いを取って、クタクタになって帰るという選択肢を取るが、どう頑張ってもその気になれなかった。私は断るための返事を一生懸命考えた。
「就職試験がうまくいかなくて、内定もらえるまで厳しいです(笑)」
よし、これでどうだ。先輩が就職試験に対して気を使わないように(笑)をつけたし、当分は飲み会に誘われないだろう。
私は、断ることのできた自分を褒め、送信を押した。
しかし、私の希望はすぐに消えた。
「それは分かったけど、なんでそれで飲みに行けないの?〇〇ちゃん(先輩のお気に入りの可愛い女の子)がreiちゃん来ないと行かないって。だから来て」
???
私は先輩の返事を何回も確認した。
こいつ(先輩です。ごめんなさい。)、なにを、言っている?先輩のために自分を削れってこと?
どうしてもむしゃくしゃして、私はすぐ友達にLINEを送った。
「私は年中無休でネタキャラをしているわけではないのに!!」
すると、すぐに既読がついた。絵文字も何もないシンプルな一文が送られた。
「あんたを傷つける人のために自分自身を削る必要はない、自分の人生を大切にしろ」
自分の人生を大切にしろ。じぶんのじんせいをたいせつにしろ。
難しい話じゃない、だからこそ、親友の言葉が心に刺さった。
そうだ、その通りだ。私は私のために生きていいはずだ。
私はまず自分の人生を彩る役目がある。
その日から私は動き出した。よく出没したSNSは触らなくなったし、行きたくないお誘いは全部断った。愛情乞食だった昔の私には想像できない。それでも私は、自分を大切にしてくれる友達と幸せになるために優しい人間になりたい。
長年育ててきた役目を切り捨てるのは難しいし、「ネタキャラ」のイメージを払拭しようというのは正直無理だ。役目を果たせと押し付けてくる人だっているし、負けそうになる時だってある。
だけど、そんなの、知らない。だって私は、心の中で叫ぶ。
お前のために生きてない!!!