今も昔もあまり好きではない父は、車に乗ると人格が変わる
「デブの髭のメガネで、鼻の横に大きなほくろがある人」が、以前の父を説明するのに、もっとも的確で簡潔なテキストだった。
今はちょっと違う。鼻の横の大きなほくろはずいぶん前に除去したし、15年ほど前にダイエットに成功して、大きなお腹はすっかりへこんでしまった。正確な数字は知らないが、確か2、30キロ減量していたはずだ。
そんな父が、私は今も昔もあまり好きではない。
幼い頃は、飲み物を父のコップから与えられそうになると、「髭がいやだ」(髭が不潔だと思っていた)と断固として拒否していたし、父に抱かれると嫌がり「ママ~」と全力で母を呼んでいたらしい。
さらにはお行儀の悪いことをしてはいけないと言ってる側から、自分でやってしまうから全く説得力はなかった。中でも一番嫌だったのは、車に乗ると人格が変わることだった。
私の家族は人数が多かったから、日頃ずっと車で移動していたのだが、父は毎回と言っても過言ではないくらい、運転中に激昂していた。
気に入らない運転をする車があれば、煽ったり無理な割り込みをしたり。さらに割り込まれたら、赤信号になった隙に車を降り、その車の運転手に怒鳴りに行ったりもしていた。
今それをすると、きっとネットに流され炎上するだろうな。
父とのエピソードを振り返ってみても、嫌なものばかりだ
中学生の頃に友達と、親の物真似をして盛り上がっているときに、その父の真似をしてその場の空気を凍らせたことがある。私はそれまで全国共通で父親はそんなものだと思っていたから、その時初めてそれが普通ではなかったことを知った。そしてようやくそういう父の姿が、とても嫌だと思っていることを自覚した。
今から振り返ってみても、思い出せる父とのエピソードは、ほとんど嫌なものばかりだ。
小学校の頃、気づかず弟に怪我をさせてしまいそうになった時に、すごい剣幕で怒られて、殺されるのかと思ったこと。
算数のテストがいつもあまりにも悪く、父に勉強を見てもらって受けたテスト(百点満点)が、30点ほどしかとれなかったこと。
中学に上がると、定期テストで赤点を取ったら部活を辞めさせると言われていたこと。
高校3年の受験生の時、高望みな志望校設定をし、「俺はなんかいける気がする」といける気がしない私にほぼ毎日言い続けたこと。(結局、落ちて一浪した)
2年目の受験の、忘れもしないセンター試験の1週間前、母がSNSで男性の友人とメッセージのやりとりしていることを目撃し、「浮気してるんじゃないか!」と大騒ぎしたこと。
最近更新された最悪の思い出は、留学準備のためにドイツに行く直前に「落ちたら殺すぞ」と言われたことである。冗談っぽく言ってはいたから、その時は私も笑って流したのだが、後々言われたことにショックを受けた。
暴力も虐待もされてないけど、父のような人とは結婚したくない
もちろん父から暴力を受けたことも、虐待されたことも一度もない。衣食住に不便することもないし、私の勉強にも支援してくれている。文句なんてひとつもない。感謝だってしている。
けれど私は、父のような人とは絶対に結婚したくない。
時々「お父さんみたいな人がタイプ」や「父のような人と結婚したいと思います」という人を見かけるが、本当にどんな家庭環境なのか、甚だ疑問である。
私の父は基本的に情緒不安定であるし、自分の体調の悪さを人にはアピールするのに、私が生理痛で死んでいると「テレビでジェンダーレスを訴えてる人がいてさぁ、そのくせ生理痛でしんどいことを理解しろとか言ってたけど、それってどうなん?」とか嫌味っぽく聞いて来たりする。
うるせー、好きで女として生きてんじゃねぇ。
挙げ始めるとキリがない。「私はこういうことをされたらすごく嫌なので辞めてほしい」と先日言ってみると激昂されたので、私はもう二度とそういうことを父とは話さないと決めた。
今後、私は父に判を押したように同じことしか言わないだろう。それは、
「いつもありがとう。長生きしてね」