私は少し前までツイッタラーだった。SNSに自撮りをあげれば、誰かが「可愛い」と言ってくれる。彼氏はいるが、直接甘い言葉を投げかけてくれるような相手ではない。

ほんとは彼に可愛いと言われたいけれど、言ってくれないので、その欲求をSNSで埋める。たまに露出の多い写真をアップすると、いいねなどの通知が鳴りやまない。SNSで私は人気になっていく反面、彼は私のSNSを見る度に機嫌が悪くなっていった。

SNSで写真をアップするたびに褒められ、大事な存在を選べなかった

彼に可愛いと言われたいのに、SNS受けばかり狙ってしまう。だから最近、彼とは喧嘩ばかり。そんなことを考えながらも、カメラアプリを起動させ自撮りモードに。

彼のことを考えていたはずなのに、満足いく写真が撮れたらもう彼のことなど頭にない。さっそく今日1番盛れた写真をSNSにアップする。

しばらくして携帯の通知が鳴る。ツイッターの通知と思いきや、彼からのLINEだった。「まじあのアカウントなんなん?わけわからんのやけど」。

そんな気はしていた。今日あげた写真はいつにも増して露出度の高い写真、彼が怒るのも無理はない。私が「ごめん……」と送ると、「なんで謝るん?謝るならあんな写真のせるなよ」と送ってきた。

彼の怒りをなだめようと謝るも、そうはいかない様子。「ああいう写真載せ続けるなら俺、お前と別れるから」と、とうとう彼の口からは別れ話が……。もちろん彼とは別れたくない、だからあのアカウントはもうやめる、そう一言送ればよかったのに私の手はそこで止まった。

彼のことは大好きだけど、「SNSをやめる」と言えなかった

あれから3日たっても彼は連絡をしてこない。もちろん私からも連絡はしていない。ちなみにツイッターのアカウントもあれ以来、何も投稿していない。このままほんとに別れちゃうのかな…。ただSNSをやめると言えばよかったのに、言えなかった。もちろん彼のことは大好き、だけどSNSはやめたくない……。

結論がでないまま状況は変わらず1週間、久しぶりに自分のツイッターアカウントを開いた。彼に別れ話を持ちだされてから、さすがの私も投稿する気になれなかった。

以前は毎日のように更新していた投稿が、いきなりストップしたことに心配する声があるのではないかと若干期待するも、その期待は大いに外れる。更新するたびに、いいねやコメントをくれていたアカウントに飛んでみると、私とは別の女の子の追っかけになっていた。「そんなもんよね」。分かってはいたけど、この世界で自分は必要とされていると思いたかった。

そんな時にLINEの通知が鳴る。まさかと思いLINEを開くと、彼からのメッセージだった。「大丈夫?」。たった一言だけど、私を心配するその言葉は私にとってとても大きいものだった。「うん、大丈夫だよ。連絡できなくてごめんね、私ツイッターやめるね」と返信した。

その日の夜、私はフォロワーがいつしか5000人にまで増えたツイッターアカウントを消した。

SNSをやめ、かつての私のようなアカウントを見るとしんどくなる

今考えると、どうかしていたと思う。恋人かSNSか、どちらを選べと言われたら恋人に決まっている。しかし、当時の私は選べなかった。

ツイッターをやめてから、冷静にSNSを見られるようになり、かつての私のようなアカウントを見るとしんどくなる。「まじ、SNSやめてよかったわ」。SNSをやめてからメンタルも安定してきた。フォロワーが増えるたびにアンチも増えていたため、自分では気づかぬうちに精神を削られていたのだと思う。

「あん時のお前、なんか怖かったよ」そう、笑いながら言うのは私の恋人だ。彼とは結局、別れなかった。むしろあの件がきっかけとなりさらに仲が深まった。彼曰く、SNSをやっているときの私は今とは別人のようだったらしい、もちろん悪い意味で。

週末、久しぶりに大学時代の友達と集まることになった。久しぶりの友人との時間はそれはそれは楽しかった。そんな彼女たちに帰り際、こんなことを言われた。「てか、最近いいことあった?久しぶりに会ったけどなんか前より元気、パワフルになった気がする!元気の秘訣教えてよ!」。

私は笑いながら、「SNSをやめたからだよ」そう言ってその日は解散した。