クリスマスの1ヶ月前。
食い意地が張っている私は、クリスマスが近づいてくると密かに楽しみにしているものがある。
クリスマスケーキ? いや、違う。チキンやローストビーフでもない。

クリスマス前から食べるシュトーレンは、クリスマス先取り特権

それはパン屋さんに売っている「シュトーレン」という菓子パンである。ドイツの伝統菓子で、パンの中にラム酒で漬け込んだドライフルーツが練り込まれていて、真っ白な粉砂糖が外側に大量にコーティングされている。カロリーの化け物である。
説明を聞いているだけで、甘っ!ってなるかもしれないが、ラム酒が効いているので、全然しつこくなくて、上品な甘さと幸せが口いっぱいに広がる。
温かい紅茶と一緒にいただくと最高である。
「ああ、疲れた体に染み渡るぅ~」と独り言を言いながら、食べている。

「シュトーレン」は洋酒と砂糖がたっぷり使われているので、結構、長く日もちする。
本場ドイツでは、クリスマスの4週間ほど前から、少しずつスライスして食べていくらしい。
クリスマス先取り特権である。
私も真似して、細長い「シュトーレン」を毎日1センチずつ、律儀にカットして食べている。
クリスマスが来る前に、楽しんじゃっていいんですか!いいですとも。
ドイツの方々、ありがとう。
私は心の中でお礼を言ってお辞儀をする。

クリスマスは、当日やイブだけじゃないんだと、私に気づかせてくれた

クリスマスという神聖な日を待ち遠しく思いながら、一日一日を楽しみに過ごす。
そんな思いが込められた「シュトーレン」。
「シュトーレン」は、クリスマスって、当日やイブだけじゃないんだよ、と私に教えてくれた。クリスマスを迎えるまでのわくわく感。一日一日を大切に味わう。言葉どおり、「シュトーレン」を噛み締めて味わっている。
初めてパン屋さんで値段を見たときは、「えっ、2000円!?」って驚いたときもあったが、お値段以上の価値があると、私は思う。
クリスマス気分をより多く味わえるからお得かもしれない。

雪をかぶったような「シュトーレン」が少しずつ小さくなっていく姿が愛おしい。 
嫌なことがあったり、しんどいなって思ったときも、「シュトーレン」にナイフで切り込みを入れる瞬間に、ふっと忘れることができる。

幸せを噛み締めながらカレンダーを眺める。クリスマスもあともう少し

外は硬くてさくさく、粉砂糖のしゃりしゃりという音がして。
中は洋酒が染み込んでいるので、しっとり。くるみやアーモンドが入っているとカリカリ音。
口の中で、「シュトーレン」が素敵なメロディーを奏でている。
あー、太るかもしれない。
まあ、でもいっか、今年は寒そうだし、脂肪を蓄えよう。

「シュトーレン」を口いっぱいに頬張り、幸せを噛み締めながら、私は12月のカレンダーを眺める。
クリスマスも、あともう少しか。
最後に消えてなくなってしまう「シュトーレン」のことを想像すると、少し寂しくて悲しくなる。
ますます、一口一口を大切に味わわなくては。
お皿に載った「シュトーレン」をじぃーと見つめる。

まあ、クリスマスにはチキンやケーキが待っているか。
さらに太ると確信した私であった。