私は現在28歳で、約3ヶ月後には29歳になる。もう完全なるアラサーだ。
そして約30年前、当時24歳だった母は3つ年上の父と結婚し、その1年後に25歳で私を出産した。

母が私の年齢の頃は、3歳の私と1歳の妹の子育てをしていた

私の“28歳”という年齢は、当時の母が父と結婚した年齢も、私を出産した年齢も、私の妹を出産した年齢も、とうに飛び越えてしまった。
母が私の年齢の頃(そして、その頃の父は当時31歳)は、3歳の私と1歳の妹の子育てをしていたというのだから、本当にありきたりな感想になってしまうけれど、すごいな、と思う。
今の私は、目前の自分の生活で精一杯で、子供2人を育てる心の余裕も、自信も、きっとない。

今月で、実家を出て一人暮らしを始めてから約1年3ヶ月が経った。
世間から見て、私は“28歳の一人暮らしをしている社会人”で、金銭的にも精神的にも自立した「大人」として見られているのかもしれない。
だけど、一人でいることが寂しい日もあるし、甘いお菓子はもちろん好き。
「会社に行きたくない」なんて、わがままを言ってズル休みをしたくなる時もあるし、ぬいぐるみだって大好きだ。好きなキャラクターのマスコットも家にたくさんある。
自分の気持ちや考え方も多少は年々アップデートされているかもしれないが、20歳くらいからぱたり、と止まっているような気もする。

こう書いてみると、年齢的には大人かもしれないけれど、子供っぽいところもたくさんある。大人ってもっとバリバリ仕事もして、弱音も吐かない、強くてたくましい存在だと思っていた。
大人の仮面を被った子供のままの私は、小さい頃の私に自信を持って胸を張れるような大人になれているのだろうか。

大人へ近づくごとに、自分の思う「これが正しい」を何度もぶつけた

一人暮らしを始める前は家族と衝突し、口論することも多かったけれど、一人暮らしを始めてからはそれもすっかり少なくなった。
小学生の頃、私にとって両親は絶対的な存在で、仕事に一生懸命で私たちのことを色んな場所へ連れて行ってくれる父のことも、いつも明るくて友達のように何でも話せる母のことも大好きだった。
だけど私が中学生、高校生になり、どんどん大人へと近づくごとに、父の頑固すぎるところや、母の私たち娘との距離が近すぎるところなど、絶対的な存在だった2人のことは大好きだけど、苦手だなと思うところも少しずつ見え隠れするようになった。
そして、思春期を迎え、今まで従順だった反動で口も達者になった生意気な私は少しずつ両親に対して反抗していくようになった。

どうして周りの同級生は県外の行きたい大学に行けるのに、私はだめなの?
どうして友達と出掛けた後、迎えに来てもらわないといけないの?みんな、自分でちゃんと家まで帰るし、私も子供じゃないから帰れるよ?
どうして朝帰りしただけで怒られないといけないの?ちゃんと地元の友達と近くでカラオケしに行くって言ったじゃん。

私は世間の常識や正論を振りかざし、父にも母にも自分の思う「これが正しいでしょ?」を何度もぶつけた。それが私の正しかったことだとしても、父と母の気持ちを無視して、何度もはむかってきた私は両親からどう見えていたのだろう。

大人の仮面を被った私だけど、少しは大人に近づいているのかも

成人し、両親が結婚した当時の年齢を飛び越えたくらい大人になってから、父も母も私たちが生まれるまでは“お父さん”と“お母さん”ではなく、一人の男性と女性だったんだよな、今の私のように子供な面もどこかに持ち合わせていたんだよな、と最近少し小さくなった2人の背中を見て感じる。

私は裕福な家庭じゃないから県外への大学進学が難しいことは分かっていたし、私のことを心配して送迎をしたり、朝帰りを怒っていたりしたこともちゃんと頭では理解していたつもりだった。
だけど、周囲と比べて思い通りにならない、どうにもならない現実から目を背けたくて、私の口からの攻撃は止まらなかった。
父も母も完全な存在じゃないのに、私はいつの間にか自分の理想で作り上げた“裕福で、子供を信じてくれて、夢でも何でも応援してくれる完璧なお父さんとお母さん像”を両親に押し付けていたのかもしれない。
お父さん、お母さん、いままで嫌なこともたくさん言ってしまってごめんね。

そんな両親と妹と家族4人で食事に出かけたときのこと。最近の他愛もない話をしながら食事をすると、両親はいつも「変わったことはない?ご飯食べてる?」と私の暮らしぶりを気にかけてくれている。
妹も寂しがりな私の気持ちを知ってか知らずか、「おねーちゃん、一緒に桃のケーキ食べよー!」と手土産を持ってはちょくちょく遊びに来る。
実家にいた時は当たり前に、何なら少し煩わしいとも感じていた家族の優しさに触れて、娘をいつまでも気にかける両親や仲の良い妹がいてくれて、私は本当に恵まれていたのだな、というありがたみを少しずつ噛み締められるようになってきた。
大人の仮面を被った私だけど、一人暮らしを始めてから少しは大人に近づいているのかもしれない。

私を心配して反対している時は、自分の言葉で真剣な気持ちを伝えたい

私には将来を真剣に考えてお付き合いしている彼がいる、まだ両親に紹介はできていない。
紹介したら2人ともどんな顔をするだろうか。なんだかんだ言っても最終的には認めてくれるといいなと思うけど、もしまた私のことを心配して反対されてしまった時には、あの時みたいに口撃するんじゃなくて、自分の言葉ではっきりと両親に真剣な気持ちを伝えたい。そして母にも父にも納得してもらった上で私のことを幸せに送り出してほしい。
だって私ももう大人だから、自分のことは自分で決めるよ。

今年で両親は結婚30周年を迎える。結婚30周年おめでとう。
両親から見たら私はいつまでも子供かもしれない。だけど、色んなことを経験して少しずつ見方や考え方を変化させて私は大人になっている。
もう少し私も大人になって家族と衝突したときは、反抗ではなく、自分の気持ちをきちんと伝えられる大人になりたい、そして今までたくさん注いでくれた愛情を両親に少しずつ恩返ししていけたらいいなと思う。

だから、お父さん、お母さん。これからも生意気な娘の人生応援してください、そして2人仲良く、いつまでも健康で長生きしてね。