理想の子どものフリをしていた私にとって大人は自由な存在に見えた

高校生の頃、私は大人になりたいと思っていた。
「子供に戻りたい」という大人の意味が分からなかった。

受験のために勉強して、その結果に左右される自分が嫌いだったから。
その結果を親や先生に見せるたびに、相手の顔を探る自分が嫌いだったから。
人から褒められることで、承認欲求を満たしている自分が嫌いだったから。

大人になって、もっと自由に生きられたら、どんなに楽なのだろうか。
自分の思い通りに生きられたら、どんなに楽しいのだろうか。
「理想の子供でいないといけない」という思いを持っていた私は、大人は自由だと思い込み、大人への期待感を勝手に抱いていた。

そんな思いを抱きながら、大学生になったと同時に1人暮らしを始めた。
親元を離れたことによって、理想の子供像から解放された。
全てを自分で決められるようになった。自由になった。

大人になれる期待感を胸に始まった就活で、過去に引き戻された

ただ、自由だからこそ、何をすれば良いのか分からずに戸惑うことが多かった。
それまでの私は、周りに流されて生きていたから、意思決定の方法がわからなかったのだ。
決める方法が分からず、周りに流されながらではあったが、少しずつ自分の行きたい方向を探ることが出来るようになってきた。
それに加えて、学生ということもあり、様々な人に支えてもらいながら、本当にいろいろな経験や挑戦をしてきた。
とりあえず、学生時代にいろんなことをしておけば、就職活動は上手くいくだろう思っていたからだ。
ただ、今考えてみると、課外活動をすることによって、自分と向き合わなくても済むと思っていたから、こんなにいろんなことをしてきたのだと思う。

大学3年生になった。
いよいよ、就職活動の時期になった。
やっと、大人になれる。そんな期待感を持ちながら就職活動を始めた。

「あなたを一言で表してください」
「あなたの挫折体験を教えてください」
目を向けたくなかった過去に引き戻された。
過去なんか、どうでも良いから今の私を見て欲しかった。

取り繕っても届くお祈りメール。子供に戻りたいと思った

「あなたが将来やりたいことは何ですか」
「どんな社会人になりたいですか」
分かるはずなんかない将来のことを、考えないといけなかった。
将来を考える度に不安になった。怖くなった。

コロナの状況や地方に住んでいることもあり、オンライン面接ばかりだった。
パソコンの画面に向かって、なんとか取り繕って、必死な笑顔で答えた。
相手の答えて欲しいことを考えて、外さないように探って、答えた。

それでも、来るのはお祈りメールだけだった。
これを見る度に、全てのやる気が吸い取られるような気持ちになった。

子供に戻りたい。
唐突に、ただ純粋にそう思ってしまった。
それでも、今更子供なんかには戻れない。
期待していた理想の大人像とは違うけど、大人になるしかないんだから。
そのためには、社会人にならないと。

そこで、開き直って、私らしく素直に思っている事を話すようにした。
これで全てが上手くいったわけではないけど、なんとか内定をもらう事が出来た。
初めて、その連絡を見たときは、飛び上がるほど嬉しかった。

私らしく、自分と向き合って生きてみよう。
そう言い聞かせながら、今日も1歩ずつ大人に近づいていこう。
流されて大人にならないように。私の意思で大人になれるように。
私らしく生きられるように。