昨日の夜、彼の夢を見た。
2人で遊園地に行き、スリル満点な飛行機のアトラクションに乗った後、彼は私に高級レストランの予約チケットを手渡してくれた。
その後、場面が切り替わって、彼はなぜか一人バスに乗っていて……。

トゥルルルトゥルル……と、そこで携帯のアラームが鳴る。
寝ぼけ眼のまま起き上がり、ベッドの横の写真に目をやる。
小学校の卒業式の集合写真。友達に囲まれ、当時流行っていた雑誌モデルのポーズをとる私の横に、照れ笑いを浮かべる彼の姿があった。
今、彼はどこで何をしているんだろう。

距離が近づいたのは6年生の時。一緒に帰るのが習慣になっていた

私と彼は幼稚園からの幼馴染だ。
彼の名は、ここではKとしておこう。
幼稚園も小学校も田舎の小さな学校だったため、そんなに深いかかわりがなくても毎日必ず顔を合わせる存在だった。
急に距離が近づいたのは6年生の時。
ただ何か特別なことがあったわけではない。
その証拠に何も覚えてはいないし、私には当時、K以外に好きな人もいた。
たまたまKと席が近くなった私は、彼の読む漫画をチラ見して、「へえ、男子ってそういうのが面白いのね」と気取ってみたり、「ねえ、髪の毛ちゃんと結べてる?」と好きでもないのに余計な気を引こうとしたり、自分でもよくわからないが、そういうことをして遊んでいた。

そして、なぜか学校が終わると私はKと一緒に帰るのが習慣になっていた。
本当に他愛もない話をした。
学校で女子だけ集められ教えられた「セイリ」の話。
雑学好きなKからは、世の中に「うなぎ」という名字の人が6人しかいない話。
3月に入ってからは、卒業式のスピーチ練習もした。
Kが先に帰ってしまったと知った日は、なんだか寂しかった。
そういう日は早歩きで帰り、自然とKの姿を探していた。

Twitterで見つけたKに、悩んだ末にフォローリクエストを送信

恋、ではなかったと思う。
それでも、卒業式の前日、いつもの分かれ道で、
「じゃあな」
と言った彼の言葉を、私は今でも忘れない。

別に恋人でも友達でもないし、なんだかその人の話をするのは面倒くさい。
とか言って実はすごく会いたがっているのかもしれない。少なくとも私は。
だからあんなことをしてしまったんだろうな、と思う。

あれは、高校生のとき。
当時、友達の勧めで私はTwitterを使い始めていた。
知り合いのツイートを見たのをきっかけに、Kのアカウントを見つけたのだ。
中学に入るタイミングで、私は隣町に引っ越した。
それから彼とは一切顔を合わせていない。

私は悩んだ末に、彼にコンタクトをとることにした。
フォローリクエストを送信すると、思いのほか早く私にもリクエストを送ってきた。
「彼は返信が早い方なのかあ」
付き合ってるわけでもないのに、そんな小さな発見にすら胸が跳ねた。

「久しぶり~ごめんね急に(笑)」
「別に大丈夫やで(笑)」
そうやって、数年ぶりに、今度はKとのSNSコミュニケーションが習慣になった。
彼から連絡がくることはない。
でも、私が何か話し出すと、必ず返信をくれた。

「一体何をしてたんだろう」。Kの家の近くまで来た時、突然悟った

恋人たちの季節に差し掛かり、私は久々に地元に帰ることにした。
「バレンタインにさ、お菓子つくろうと思うんだけど、Kは何が好き?」
なぜか、こう聞いてしまった。
「え、あー、クッキーとか?(笑)」
彼もなぜか、私にこう返してきた。
そうして舞い上がった私は2月中旬に帰省してクッキーをつくり、親友の家に泊まりに行ったついでにKの家まで向かおうとしていた。
ところが、彼の家の近くまで来たとき、私は突然何かを悟った。
「私、一体何をしてたんだろう」
誰も私の行動を止めようとはしなかったし、そのまま会いに行くことはできた。
「ごめん、やっぱ行くのやめた」
「色々ありがとね」
いつも一方的で、自分がメンヘラ女子のようになっていたことに気付いた私は、Kの「うん」という優しい返事だけを待って、そっと画面を閉じた。

早いもので、この春私は大学4年生になる。
小学生のとき、旅立ったのは私の方だった。
夢の中で、彼は一体どこへ向かっていたのだろう。
気まぐれで登場するあんたのことだから、今度いつ会えるかわからんね。

あんたの連絡先も、あんたの家も、もちろん知ってるけど、今すぐ飛んでいくほど私は勇者ではないから、「ありがとう」。
次もし会えたときは、また何の役にも立たない雑学、教えてよ。