単身赴任の父親が、久しぶりに家に帰ってきた。

私は第二新卒で転職活動をしていて、1社目では色々とあり親に心配もかけた。
だから、転職の話をちゃんとしておこうと思っていた。
実は新卒の就活の時に、父と少し言い合いになった。
いわゆる、大手とベンチャーどちらか問題である。
しかも当時、就活しながらスタートアップで対面インターンをしており、コロナの心配もあって親にインターンをめちゃくちゃ反対されていた。

インターンを辞めたくなかった私は親と口論。
たぶん、父親と口論になったのは21年間生きてて初めてだったと思う。
あんまり怒らない人だったし、ハードワークで家にほとんどいない人だったので、喧嘩しようにもできなかった。
だから就活生の時の口論が、父親との最初で最後の喧嘩であって、もうあんなふうに感情的になるのは避けたいと、きっとお互いが思っている。

◎          ◎

私は冷静に、論理的に、父親とキャリアの話がしたかった。
今回は、非生産的な喧嘩にならないように。お互いを思いやりながら……。
そんなふうに思っていたから、父の返事は意外なものであった。
「俺は、今年中はまだ動かない方がいいと思う」
「今年の出会いは運気が良くない。今年は休んで来年から就活すればいい」
なんと、今回は大手かベンチャーかの問題ではないらしい。
時期の問題である。
しかもその理由がちょっと、スピリチュアル……?

父親からスピリチュアルな話題を聞くことはこれまでなかった。
けれど弟から、「父はスピリチュアルだよ」という噂を聞いてはいた。
まさかこのタイミングで、占いの結果を理由にキャリアを反対されるとは。意外であった。

誤解のないようにお伝えしておくと、私は占いやスピリチュアルを否定や批判したい気持ちは一切無い。と同時にとても深く信仰しているわけではない。
しいたけ占いだけは、なるべく毎週チェックしている、よくいる20代女性だ。
よく聞くと、父が信頼している占い?によると、私は「火星人」らしい。
そして火星人は、今年の運気が悪く、来年から3年は上昇傾向のこと。
だから、来年出会った企業に入った方が良いというのだ。

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私は、「今年出会った企業で来年から働いて上手くいく」っていう解釈もできるんじゃないのか?と反論した。
「まあそういうふうにも捉えられるかもしれないし、これが絶対ではないから参考程度に」と父は答えた。
結局、キャリアの話というよりも占いの話で終わった。

誰かが信仰しているものを否定したいという気持ちもないので、特に言い合いにも喧嘩にもならずに済んだ。
父は、占いの話を熱弁しつつも、最終的には自分で決めれば良いと言ってくれた。
私が父と同じように頑固なことをわかってくれている、ありがたい。

私と父の属性を並べてみると、あまりに世界観が違って驚いた。
文系、ビジネス職、ベンチャー志向、20代、占いは嗜む程度の私。
理系、技術職、大手志向、50代、占い信者の父。
そりゃ、話もなかなか合わないよね。
いわゆるZ世代と呼ばれる同世代の若者は、親とキャリアの話をどんなふうにしているんだろう?と、いつも気になる。
全く話さない人も多いかもしれない。
この親子世代が、おんなじ視点でモノを見ることなんて、不可能なんじゃないかと思ってしまう。
生きてる時代も違うし、信じるものも違うし、目の前に広がるキャリアも、あと何年間働かなきゃいけないのかも、全てが、全然違う世界。
家族って、身近なようで、実は一番遠いところで生きている人間なのかな、なんて思ったりした。

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父は大事な選択をするとき、その占いの結果を重視しているらしい。
私も火星人として考えると、今は決断しない方が良い時期なのかもしれない。
でも、私は火星人としての私以上に、私個人としての私を生きたい。
火星人だから今は我慢しないと、なんて思ってじっと待ってられる人間ではない。
私自身が、もう動き出したいよーって言ってる。

だからお父さん、ごめん。
私は火星人だけど、今年中に動き出しちゃうかも。
もちろん占いも面白いし好きではあるけれど、占いの悪い結果をひっくり返すくらい、星から見たら予測不能な人間でありたいよ、私は。