ずっと叶えたい夢がある。
でもそのためには毎日を大切に生きて、背筋をまっすぐ伸ばしていなければならない。
素敵なグレイヘア。
7cmのヒール。
ピンと伸びた背筋。
細身のスキニーデニムとシャネルのジャケット。
小さなショルダーバッグ。
未来の私はカツカツヒールを鳴らして歩く、「素敵なマダム」。

年を重ねることが待ち遠しい。
そんなことを思うのは、25歳の女性にしては珍しいだろうか。
もちろん中身が今のまま年をとるのは怖い。
どんな怪談話よりも恐ろしい。
そして私の妄想では30〜50代をすっ飛ばしてるから、ちゃんとその中間層についても考えないと。
私が目指すのは素敵な60代。アラウンドシックスティ。アラシス?そんな風には言わないか。
あ、アラカンだ!アラウンド還暦。
そう、素敵なアラカンになりたいのだ。
イメージはパリジェンヌ。
たくさん恋をしてきましたよ、つらいことも楽しいことも経験してきましたよ、そんなことが見た目でわかるマダムになりたい。

◎          ◎

さて、現在25歳の私。
仕事をそこそこ頑張って、恋とは言えない微妙な関係をあっちで始めてこっちで終わらせて。
なんだかおもしろくない人生を送っている。
微妙。その一言につきる。

「きっとパリジェンヌはこんなとき」
これがここ数年、悩んだときの出発点。
60歳の素敵なパリジェンヌが若かったとき、と妄想を始める。
そんな妄想で悩みが解決するのかって?
しない。むしろパリジェンヌはこんなことで悩まないってガッカリして終わる。
60歳のパリジェンヌはきっともっと素敵な20代を過ごしてるんだよ、と別の妄想を広げだす。
友達と海外とかへ遊びに行って、時に失敗しながら仕事を一生懸命頑張って、大きな恋愛をして心を強くしてるんだよ。
なんて素敵なの!、とここまで妄想。
で、今の自分と比べてため息をつく。
このままじゃつまらないおばあちゃんになってしまう。
大した人生も送ってなくて、若者に小言ばっかり言うつまらない大人になっちゃう。
なんとかしなければ。

◎          ◎

そこで始めたのが「こんな人になりたいなぁ」を見つけること。
友達でも職場の先輩でも、電車にいる全然知らない人でも、素敵な人はそこかしこにいる。
前は「こんな人には絶対なりたくない」を見つけてた。
でもそうすると嫌なとこばっかり見るようになっちゃうから、人の粗探ししてるみたいで気分が悪くなる。
もちろん嫌なことされたら「こんなことしないように気をつけよう」って反面教師にするけど。

いいところ探し、というか憧れるところ探しは気持ちをしゃんとさせてくれる。それに、なりたい自分をくっきり浮かび上がらせてくれる。
姿勢がいい人、ご飯の食べ方やコーヒーの飲み方がきれいな人、颯爽と歩く人、などなど。
そしてたまに、理想のパリジェンヌを発見できる。
そんなときは要観察。
その人の何に惹かれたのかをじっくり考えて、60代の私の妄想をアップデートする。

60代まであとざっと30年くらい。
私が妄想する60歳へはまだまだ遠い。
もっともっと色んなものを見て、楽しいこともつらいことも経験して、それでも笑ってられる素敵なパリジェンヌに少しでも近づけるように。
今日も私は背筋を伸ばして歩く。