このエッセイを書いてるときは選挙シーズンだった。どこにいても選挙カーから色々な声が聞こえる。
「みなさまの清き一票を宜しくお願いします!」
「ご声援ありがとうございます!頑張ります!」
「みなさん!選挙に行きましょう!そして政治を変えていきましょう!」
私は有権者であり、また政治にも興味があるので自分のできる範囲で情報を収集し投票に行く。私は選挙や政治に関する情報を見聞きするのが好きだ。
しかし、私以外にも選挙に興味を示す人たちがいる。
それは幼い子どもたちだ。

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私は4月から子どもと関わるアルバイトを始めた。とても元気いっぱいであっちこっちへ遊び回る。時々はしゃぎ過ぎて転んだりするけれど、とても優しく可愛い子どもたち。
そんな子どもたちには今ハマっていることがある。
“選挙カー観察”である。

施設の周りを選挙カーが通ると、小さい体で必死に追いかける。もちろん道路には出られないように囲いがされているのだが、囲いの外の選挙カーを追いかけてずっと観察している。
「選挙頑張ってね~!!!」
「応援してるよー!!!」
「ばいばーい!!」
子どもたちが大声で選挙カーに手を振っている様子はとても愛らしいし、その様子はどこか面白い。思わずクスクスっと笑ってしまうほどだ。
子どもたちの声を聞いて選挙カーも返事をする。
「みんな、ありがとうございます!頑張ってまいります!」

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選挙カーを見送ったあと、ある子がこういった。
「ぼく、今は選挙に行けないけど、いつか絶対に行ってみたいんだ!」
また違う子もこのように言った。
「じゅうはち?じゃないと駄目だからまだまだだけど、やってみたい!」

選挙に行く世代は20代が少なく60代が多いという情報を耳にする私にとって子どもたちが選挙カーに興味を示し、「いつか選挙に行ってみたい!」という言葉を言うことは意外だと思った。
人はいつから「自分には関係ない」とか「どうせ私の一票で政治は変わらない」と考え始めるのだろうか。そのように考えてしまうのは現代の人が必死に働くことが当たり前になり、政治について考える時間がないからではないか。
小さい子どもは何に対しても興味を持つから選挙カーを追い回しているだけかもしれない。けれど、今のあの子たちには選挙は興味の対象なのだ。いや、あの子たちにとって選挙は新しい遊びなのかもしれないが……。

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「一旦中に入ろうねー!」と言っても「えー!?選挙カーを待ってるからやだ!!!」というほど選挙カーに興味津々。
あっという間に“選挙カー観察”がブームとなり、1人2人……と観察する子どもたちの人数が増えていった。
またある子には「選挙ってなに〜?」と質問攻めにされる。でもまだ理解するには難しいようで、説明してもキョトン……とした顔をしている。その顔がとても愛らしい。

あの子たちに「もう選挙カーは来ないんだよ。選挙終わったんだよ……」と言ったらどうなるのだろうか。ショックを受けるのだろうか……笑って終わらせるのだろうか……。

いずれにせよ、子どもたちがハマった“選挙カー観察”は私が今持っている笑い話の中で一番ほっこりとするように思う。