「夢」というと、大袈裟かもしれない。しかし、遥か未来の話をした小学生時代の当時の心境を考えると、夢と表現しても良いだろう。
私には小学生の頃に出会い、今でも連絡を取り合う「親友」と呼ぶことのできる友人がいる。
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彼女とは、10歳の頃のある朝、共に飼育小屋の近くで、草抜きをしていた。ふと周囲を見渡すと、少し大きめの石が近くにあった。どちらから言い出したかは、定かでないが「この石に、10年後の私達へのメッセージを書いて、10年後に探しに来ようよ」と言い出した。
「いいね!まるで、タイムカプセルみたいだね」清掃の時間が終わり、休み時間に再度石のところに行き、油性マジックで名前とメッセージを書いた。そして、校庭の一角に、小さな穴を掘って石を埋めた。「大人になるのが、楽しみだね」とニコニコしながらその場を去った。
小学校高学年になり、飼育小屋周辺が整備された。私は心配になって友人に尋ねた。「私達のタイムカプセル、まだ埋まっているよね?」友人は「私も気になって、最近様子を見に行ったんだけど、石が見当たらなかったの。きっと、誰かが処分したか、風とかで動いたんだよ」と答えた。タイムカプセルにしては、地面から浅いところに埋めた上、ただの石だから仕方がない。だが、幼かった私にとって、大事な思いが詰まった石。とても切なくなった。
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あれから約20年が経つ現在も、私達は時折、石のタイムカプセルの話題を口にする。子供の突拍子のない思い付きから始まった、タイムカプセル。掘り返すことは叶わなかったが、2人の中で、思い出話として掘り起こすことは叶っている。当時石に書いた内容を細かく覚えてはいないが、おそらく「いつまでも親友」や「大好き」といった類を記したに違いない。今も昔も、私達の相思相愛ぶりは変わらないのだから。
時が経ち、社会人になった私達の今の夢は「泊まりがけの旅行」だ。彼女は既婚者で夫婦共に、シフト制の仕事をしている。一方の私は、独身で土日祝日が休みであり、予定を合わせるだけでも一苦労である。一度、ある地域へ1泊2日の旅行を計画していた。だが、旅行の1週間前に、旅先が天災に遭い、安易に訪問できない状況となってしまい、旅行は中止となった。その後、他県に彼女達夫婦が住んでいた時に、家にお泊りをさせてもらったことはあるが、お互いが行ったことのない地でのお泊りは、実現していない。
前回、彼女に会った際「次会う時は、お互いの誕生日をお祝いしようね。今年は、お互いが欲しいものをプレゼントしようよ」と提案された。話し合いの末、彼女へのプレゼントは、彼女が前々から気になっていた、パーソナルカラー診断の費用を負担することに決まった。
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次は、私へのプレゼントの話題になった。私はプレゼントしてくれる気持ちが嬉しい。また、プレゼントを見て、他者から見た今の私に、必要であろうものが何なのかを、知ることができるのが、毎回の楽しみである。
そのため、私は何でも良かった。強いて言えばこれ、というものがあったので、念のためにリクエストした。彼女とバイバイして、ふと旅行に行く約束が果たせていないことを思い出した。彼女は、誕生日プレゼントを贈る際は、上限額を決めずに購入する。その思考を、旅行に当てはめたら、旅行が実現するのではないか。私は帰宅後すぐに、彼女にLINEをした。
「私への誕生日プレゼント、あなたとの旅行はどうかな?私へのプレゼント代を、あなたの旅費に回したら、実現できそうじゃない?お休みを合わせなくちゃいけないけどね」しばらくして返信が来た。「本当にそれで良いの?分かった!貯金頑張るね」
来る誕生月での旅行は、スケジュールや金銭面で厳しいが、年内には親友との旅行を実現したい。大人になってからの私達の夢を、必ず叶えるために。