○○くん元気ですか。

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初めて一目惚れをしたのは、小学一年生のころだった。
彼は目が二重でとても大きく、運動神経質抜群、足が速く、クラスで勉強ができてかなり優秀だった。

彼を見るたびに胸がドキドキして、心臓がどうにかなってしまいそうだった。彼を見るたびに愛おしくて、もっと話したかったし、私を見て欲しかった。

席替えのときにいつも彼のとなりになることや、彼の斜めの席でもいいから近くにいたかった。願ったけど毎回私の願いは叶わなかった。
彼は足が速く、陸上を習っていた。私も違うチームだけど陸上を始めた。たまたま試合に近くなった日に練習に来ていた彼を見る機会があった。真剣な表情で走っている彼を見て胸がドキドキした。

彼のスニーカーが私と色違いですごく嬉しかった。その時私は少女漫画にハマっていて、自分も漫画のような恋愛をしたいと夢見ていた。漫画の主人公を自分にあてはめ、主人公の彼を自分が好きな彼にあてはめては妄想していた。

漫画のシーンで、主人公がスニーカーのお守りを作って彼に渡すというシーンがあり、私はフェルトを使ってスニーカーの形にして一生懸命に縫った。だけどそのお守りは彼に渡せなかった。
消しゴムを落としたときに拾ってくれたことを覚えてる。 ニコッと笑ったときの歯並びがとても綺麗だった。

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6年間片想いをしていた。5年生のバレンタインに勇気を振り絞って手作りチョコを渡した。家でキッチンを汚し親に文句を言われながらも、頑張って作った。 ラッピングは100円ショップで可愛いハート柄のものを購入し、用意した。丁寧に丁寧に包んだ。デコレーションのチョコの配置も気にした。

その日は布団に入ってもなかなか寝付けず、ドキドキしながら学校に行き、授業は集中できなかった。

彼は私の顔を見ずに受け取った。その翌日、私は思いがけないことを耳にする。友人が、彼が私のチョコを足で踏みつけてぐしゃぐしゃにしてやったと笑いながら友人に話していたと話したのだ。
顔が真っ青になった。その次の瞬間、嘘じゃないかと疑っていた。友人と、彼の家に訪ねて直接聞いてみようということになった。彼は家から出てこなかった。

次の日彼を見かけて自転車で追いかけた。大きな声で真相を尋ねた。彼は答えなかった。

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それからはもちろん、彼とかかわる機会は全くなく、別々の高校に進学した。

彼が自転車に乗っている姿を見かけた。かなり迷ったが声をかけてみることにした。
○○くん久しぶり
胸がドキドキした。変な声だったかもしれない。彼はこちらに興味がなさそうに冷たくどうも、と返した。

信号が変わると彼はすっと走って行ってしまった。彼の後ろ姿を呆然と眺めて自転車を走らせた。

風の噂で、彼は高校ですごく可愛い彼女ができて、横浜の大学に進学したと聞いた。何でこんなに好きなのに同じ気持ちになれなかったのだろう。今でも切なく彼を思い出す。