私が秋にしたいこと。それは香水を作ることだ。

香りは私をリラックスさせてくれる。
お気に入りのヘアオイルの人工的だけど柔らかな香り。金木犀やピオニーなどの甘い香り。柑橘のすうっとするような爽やかな香り。

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好きな香りはたくさんあって、嫌なこと、心配なこと、もやもやすること。そうした、何か心が落ち着かないことがある時に、香りは少しだけそれらを軽くしてくれた。

でも、中々いままで香水に手を出せなかった。理由は2つ。
ひとつは単純に、自分の気に入る香りに出会えていないから。私の好きな香りはいくつもあるのに、それが香水となった瞬間色褪せてしまう。

アルコールのツンとした匂いが鼻についたり、なにか別の匂いと混ざって微妙な感じになっていたり、最初はよくてもミドルノート、ラストノートと変化するにつれ好みから遠ざかったり。ぶらぶらとウィンドウショッピングをしてお店を見つけるたびに色々なテスターを試してみたがどれも一長一短だった。

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そして、もう一つ、きっとこちらの方が私にとっては大きな問題なのだろうが、私にとって香りを纏うのは少し大胆で、自分の存在感を強調する勇気のいることだからだ。いい香りのする人はなんだか大人っぽいなと思う。町ですれ違ったスーツの男性、電車で隣に座った年上の女性、薫君のごとく良い匂いのする同級生。彼らはなんだかすごく高貴で気高く見えた。香りを纏うことで自らの存在を大きくしているような気がした。

そもそも私はオシャレをするのが得意ではない。技術やセンスの問題というよりはそれ以前の問題、つまりオシャレをすることに気後れしてしまうという点で自分を着飾ることに抵抗があるのだ。

真面目、清楚、一匹狼etc。

私を表すイメージはたくさんあって、それらのほとんどに私が着飾るということは含まれていない。
シンプルな服装。染めたことのないバージンヘア。化粧っけのないすっぴん。

私自身あまりケバケバしたものは好みではないけれど、オシャレの一つや二つはしていたい。でも、それに気がついた周りの人になんと思われるか想像すると少し怖い。けど、誰にも気づかれないと悲しい。

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いつまでも迷っている。でも、やっぱり周りの誰かではなく、私のことを一番に考えられる私でありたい。
今の私は自分に自信を持てる、少し大人な香りをまとった女性でありたいと願っている。今しかできないオシャレを目一杯楽しんで、いつか、あの時は似合わないオシャレをしたなって苦笑いしていたい。

しがらみの多い茶道や薬学のせいにして蓋なんかしたくない。どれも私にとっては大切なものだから。大切なもののせいで別の好きなものを諦めたら、私に「大切なもの」や「好き」なことが残らなくなる気がするのだ。だから、今は少し背伸びをする幼さに従順でありたい。

その一歩として、秋になって、私の好きな香りの花の季節になったら。きっと、オーダーメイドの私だけの香水を作ろう。私が大切なものたちを全部、好きで居続けるために。