秋にしたいといえば、美味しいものをたくさん食べることだ。食欲の秋という言葉の通り、秋にはおいしい食べ物がたくさんある。サンマに栗にぶどうなど。秋に旬を迎える食材と、それらとの相性が良い食べ物が作り出す軌跡の料理たち。お腹いっぱい食べて、この上ない幸せに浸りたい。

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夏は暑さで食欲がなくなる。もちろんたくさん食べられるときはあるけれど、基本的にたくさん食べなくても過ごしていける人だ。暑くて何もしたくない、食べなくても涼めたら良いという思いのほうが強くなる。その反動だろうか。秋になると、あれもこれもと美味しい食べ物がたくさん食べたくなる。スーパーやデパートでも秋の味覚特集が始まる。秋に旬を迎える食べ物は、どれも私の目には輝いて見えるのだ。

秋という季節が特別なのは、誕生日が関係しているのだろうか。私は秋生まれなので、幼稚園の時の誕生日会も秋に行われていた。お遊戯会の定番の質問。「好きな食べ物はなんですか?」という問いには、巨峰と答えた。幼稚園児ながら生意気な回答をしたものだ。秋とおい季節は、自分にとっては特にテンションの上がる季節。四季のなかで大好きな季節といってもいいだろう。

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おとなになってもその特別感は変わらない。好きな食べ物だけでなく、夕方になると涼しくなる気候も好きになった。日の短さを実感し、夕暮れには思わずたそがれる。今日の終わりが身にしみて、いい一日だったな、と声に出してしまうほど哀愁が漂うのだ。しかし、こんな瞬間も好きである。それでいて、今日は何を食べようかな、と作る夕食の献立を考えながらワクワクしている私もいる。夕涼みの時間がこんなにも有意義な時間だなんて、と気付かされる季節でもある。

このような、自分にとって特別な季節だから、旬な食材にもアンテナが反応する。おいしい食べ物や旬な食べ物に出会うと、何を作ろうか、美味しい食べ方はないかとソワソワするのだ。もちろん、素材の味をそのまま食べるのも良い。味わい、旨味を感じると、それだけで心が満たされていくのがわかる。秋の夜風とともに、味が体に染み渡るのだ。なんとも言えない幸せ。

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この頃秋が短くなっているように感じる。年々短くなる秋に対して、秋のうちに食べておきたい食材リストを作らなければならない。今からすぐにやってくる秋。来たと思ったらすぐに過ぎ去ってしまう秋。次から次へ登場してくる美味しい食材たちを、逃すことなく捕まえて、美味しく食べたい。

秋はおいしい食べ物の宝庫。私の胃袋も疼く季節だ。ニュースでもサンマが取れたとか、まつりで振る舞うとか、取り上げられていると嬉しくなる。デザートでも、モンブランやタルト、栗ペーストの入ったプリンなどが出てくる。値段もするし、カロリーだって多いけれど、すべて制覇したくなり、結局はすべて食べてしまう。だって美味しいから。ハイカロリーな背徳感と、散財してしまった罪悪感を心に持ちながら、買ってよかった、美味しかった、と満足感に満たされる。毎年恒例だ。

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秋になるとワクワクが止まらない。ここそとばかりに食欲が湧き出し、今だと言わんばかりに箸やスプーンが進む。すべてが美味しいから、幸せに満ち溢れる。とにかく美味しいものがたくさんある季節が秋。秋が大好きな理由も、美味しいものがたくさん食べられるから。今年も、これでもかと言わんばかりの秋の味覚を、食べすぎたと後悔するほどたくさん食べるつもりだ。

今年の秋、今はまだ見ぬ秋の味覚に心が踊っている。美味しいものばかり、定番から新作までお腹いっぱい食べつくそう。心も満たされるまでたっぷりと。もうすぐやってくる大好きな季節が待ち遠しい。今からどんなものを食べようか、満たされようか想像するだけでもたのしくなる。

私が秋にしたいこと、美味しいものをたくさん食べて満たされること。幸せな秋が待っている。