私の4年間は、社会人になって社会の荒波にもまれた期間であった。

社会人になりたい、そう思って学生生活を過ごしてきた私。これから待つ、働くということに思いを馳せていた。

なぜ働くのが待ち遠しかったかというと、自分でお金を稼ぐことができるからだ。子どもの頃から早く稼ぎたい、自分の力で生活がしたいと思い続けてきた私。大学生になりバイトができることも、車の免許が取れて行動範囲が劇的に広がったことも嬉しかった。

大人の1歩を登っているようで、とてもワクワクしていた。

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そして、ついに迎えた社会人1年目。新卒として入社式に心を踊らせ、配られた新人カリキュラムを見ながら、ついに社会人としてスタートを切ったのか、と感慨深くなっていた。社会人の最初はたいてい新人研修がある。私が就職した業界は、古き文化がはびこっている業界だったので、なにかとアナログな方法で研修が行われた。資料は紙で配られ、ファイリング。大量のマニュアルと職場全体の説明書きが渡される。

毎回研修のときに持っていかなければいけないので、重たく荷物だ。資料はプリントが配られ、各々書き込むスタイル。実技研修もあるので、予習は欠かせない。

ここまでは、新人研修として着実にこなしていたが、問題は部署に就いたときである。
私が配属された部署は、どことなく閉鎖的な空間。先輩との仲が悪いわけではなかったが、毎日の指導で心が折れていった。どれだけ頑張っていても、当たり前のように受け流され、評価されない。できていないところだけがどんどん浮き彫りになっていく。働いている意味を見いだせなくなり、常に退職の2文字が脳裏に浮かぶようになった。

いろいろ考えていくうちに、自分の考えと仕事として働いている自分との調が取れなくなっていることに気づく。このままでは社会と完全に離れてしまうと思った私は、きりの良いところでこの業界をやめようと決心する。結果、2年ほどで退職した。
いまでもその決断は間違っているとは思わない。自分が考えて出した結論で、この先の生活が厳しくなっていても納得できる暮らし方ができるのならば構わないと思って決めたことだからである。

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退職したあとは、同じ業界でも違う働き方で携わることにした。勤務地も変えた。すると、仕事への関わりや、自分の心持ちがガラリと変わった。

これまで、絶対に業界とは関わらないと決めていた私だったが、これなら続けられると感じた働き方だった。もちろん、シフトの調整はしてもらい、フルタイムでの就労はやめた。自分が続けられる働き方で、自分が楽しいと思える範囲で仕事をするのがベストだからだ。

この4年間で、自分と社会との位置関係を構築し直した。社会という荒波にもまれ、切っても切り離せない世界でなんとか折り合いをつけて生きている。

同じ業界でも、形や見方を変えれば圧倒的に働きやすくなることを知った。心から変化を感じられたのは、荒波にもまれた時期があったからだ。どうしようもなく逃げ出したいと思った時期を経験したから、自分なりに社会とどのように付き合っていこうか考えることができた。

これからは、もっと自分の理想を叶えられる働き方で社会に寄り添いたい。4年間で社会も世間も大きく変わった。徐々にこれまでと同じように戻ろうとしている風潮も見て取れる。新しい社会に慣れているため、昔の方法を受け入れるのには賛否両論あるだろう。私もまた、荒波にもまれるときがくるかもしれない。それでも、昔とは環境が違う。やりたいこと、やってみたいこと、続けたいこと、それぞれを満足するまで突き詰められる世の中でもあるだろう。いままで経験した荒波も、いつかの糧になることを願っている。

世の中が一変したこの4年間で、私もかなり変わった。というか変えられた。今やりたいことを楽しむべく、今日も変化を続ける社会と交わり続けることにしよう。社会との距離を立て直せた私ならできる。そう強く言い聞かせて、今日も明日も歩み続ける。