ライティングという仕事を始めてから、ノマドワーク、時間や場所にとらわれない仕事という働き方を知った。パソコンで文字を打つのが好きだった私。やってみたい、と「書く仕事」にチャレンジしてみることにした。
始めた頃は、思ったよりもエネルギーを使い、一本書き終わるのにかなりの時間を費やした。どれだけ書いても文字数が足りない。いつになったら完成するのだろう。主な執筆場所が家であることもあり、いろいろな誘惑に目移りしていったときもあった。ダラダラと時間を持て余していれば、途端に目の前に立ちはだかる納期。寝る間も惜しんで執筆をするときも少なくなかった。閉じるまぶたを何度もこじ開け、とにかく書くことを自分に課していた。そんな日々を送っていたが、始めたばかりの私に支払われる報酬は微々たるもの。ライターだけでは生計が立てられず、副業という形で続けることにした。
副業としてライティングをこなしながら、空き時間に覗いたSNSにふと、興味を抱く。同じようにライティングをしている人たちとつながるSNSでは、ホテルに滞在しながら仕事をしている人がいた。ほかにも、カフェやワークスペースを活用している人がいたのだ。会社ではない場所で、自宅でもない場所で、少しばかりお金をかけながらも仕事をしている姿に憧れた。自分の好きな場所で、その時に集中できる環境を作ってできる仕事がとても魅力的に映った。私もあんな風に仕事がしたい、と思ったのだ。
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とはいえ、今の稼ぎではそこまでいいホテルで仕事はできない。お手頃で、私にも行けそうな場所はないかと探してみることにした。すると、雰囲気が素敵でシンプルかつおしゃれな部屋のホテルが見つかった。値段もそこまで高くなく、これなら自分でもいけると思った。時間を見つけて、今週なら空いている、とすぐ行動。予約をしたのは2日前の夜。予約をした瞬間から、ホテルステイが楽しみで仕方なかった。
当日になり、チェックインの時間に間に合うように家を出る。今回利用したのは、近場のホテル。移動時間は1時間もかからないところだ。ならばお金をかけずに自宅で仕事をすれば良いと思う私もいたが、それよりも特別な場所で仕事ができるという思いが先行していた。
時間を余すことなく使いたかったので、チェックインが開始される時間ぴったりにチェックインを済ませる。部屋に入ると、インテリアはベッドとデスクのみ。テレビはあるものの、壁に備え付けられていて邪魔をしない造りだ。
私が知っているビジネスホテルの多くは、ベッドの向かいに大きな鏡と、壁につけられたカウンターテーブル。作業というより、荷物を広げる場所であり、女性がメイクをするためのドレッサーのような役割を果たしている。だが、正直使いづらい。そこでパソコンを広げようものなら、90度以上にするとパソコンを手前にずらさなければならないからだ。
デスクワークをする時、手や腕を置く場所は大切である。ここが決まらないと集中力は途中で途絶えてしまう。しかし、今回出会ったホテルのデスクは、ビンテージのデスクであり、壁につけられたカウンターテーブルではなかった。さらに備品も少なく、パソコンを置くと一気にデスクワークがはかどる雰囲気を漂わせた。机の面積も十分で、好きな角度にパソコンを向けられたのだ。見やすい角度と、広さのあるテーブルで仕事はスイスイと進んだ。仕事をしている感じが感じられて、まさに理想としていたホテルステイでのデスクワークだった。
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実際に仕事を始めてみると、とても捗った。予想通り、ちょうどよいテーブルと机の関係は、自宅にも取り入れたい仕事場だ。次もまた、このホテルを使うだろう。ホテルとしてのサービスも、仕事場としても最高の空間だった。
仕事は目標としていたタスクを完了。周辺のお店で、食べたかったグルメも食べることができた。近場の宿泊ではあったが、観光と仕事を両方こなすことができて、とても有意義な時間を過ごせたと感じている。
旅先では、仕事のために宿泊したホテルで有意義な時間を過ごせた。宿泊してみたかったホテル。仕事のためにも使える場所だとわかり、これからも利用したいと思えた。ライターとして集中するための場所をひとつ見つけられて、とてもいい旅となった。