私は大学2年から塾講師としてアルバイトをしている。今となっては自分の仕事の好きなところはたくさんあるが、私の場合、最初はそうではなかった。
私がアルバイトをはじめたきっかけは大学の奨学金を返すためのお金を貯めることが目的だった。だから、生徒のためを思って勉強を教える時でさえ、“奨学金”の文字が頭の中にチラつくことがあった。
人に教えることが好き!自分のやりがいになるアルバイトをしたい!
そう思ってはいたものの、最後は“奨学金”という言葉に行き着いてしまい、「お金のために教えるのって何だか複雑…」と考えてしまう時期もあった。

でも今は違う。
お金とかそういうのは関係なく、私は塾講師という仕事が好きだ。

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塾講師をしていて、楽しい!幸せ!好き!と思える瞬間は数多くある。そのなかでも生徒と話す時間はとても新鮮だ。
授業を始めると生徒の方から「先生!」と話しかけてくれる。
「どうした〜?」と私が聞くと、「今日、体育でドッジボールした!」とか「今日の夜ご飯、オムライス食べたんですよー!」と報告してくれる。

私が「そっかそっかー、ドッジボールねぇ…先生は毎回最後まで残っちゃって大変だったよ…存在感を消していたのにね(笑)」と言うと、生徒は大爆笑。
また、「夜ご飯かぁ…先生さっき、セブンイレブンで長ネギのみそ汁を買ってきて食べたよ〜今日は長ネギの気分なんだー」と私が言うと、「明日は豚汁の気分ですかー?」と聞いてくる。
この他愛のない会話がとても楽しいのだ。

また、生徒の成長を見れるのがこの仕事の醍醐味とも言える。
「すもも先生!テストの点数上がった!」と報告してくれる子もいれば「先生!山がはずれた(笑)悔しい〜!」と笑いながら話しに来る子もいる。
「点数が上がったのは〇〇ちゃんの実力だよ!」
「あちゃー、山がはずれたか…山を当てることも大切だけど、苦手を克服するのも大切だぞー!」
こんなふうに答えると生徒たちはキラキラした顔でケラケラと笑う。
私の職場はとてもアットホームなので、時々担当していない生徒からも話しかけられたり、質問をされたりする。この空間が生徒と先生の壁を薄くしているのかもしれない。

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ただ、このようなアットホームな職場でも避けられないことがある。生徒たちの退塾である。ほとんどの生徒は高校受験が終わった頃に退塾していく。高校まで残る生徒もいるけれど、高校が忙しいといった理由で途中でやめてしまう生徒も多い。
どんなに避けたくても、生徒たちとの別れを引き止めることはできないのだ。

3月になると合格祝賀会が行われる。
そこでは生徒たちのビンゴ大会や先生と生徒たちの雑談などが繰り広げられる。お菓子やジュースを片手に今までの思い出を語り合う。
そして最後に生徒たちのメッセージ、先生のメッセージが読み上げられる。読み上げられるといっても、その場で考えたことを話すだけなのだが…
この時、生徒たちの口から「先生の授業が楽しかった」「たくさん話せてよかった」「勉強を好きになれた」などの言葉が贈られる。
その言葉を聞く度に「あぁ、塾講師を選んでよかったなぁ」と思う。

生徒たちの成長の過程やその姿を見ることができる塾講師という仕事が私はとても好きだ。
だからこれからも生徒たちの行先を見守っていきたい。