今年の成人式は縮小傾向にあった。それに対して、去年以前に成人式を迎えた大人が、SNS上で不躾な言葉を発する様子を見るのは、29歳の私から見ても、はっきり言って不快だった。 だって、私達には選択肢があったじゃないか。根本そこから奪われた子達に、「私は行かなかったけど」とか「写真館で和装すれば」などと言うのは、なんだか的外れな気がして。

それに今年成人を迎えた子達も、年長者と同様に不安を抱えて、ここ1年生活をしてきたのだ。中には、和装で友人や恩師と会うこの特別な機会を、長い間楽しみにしていた子も居ただろう。そんな純粋な気持ちを、汲めないものかねと、私は思う。

一目惚れした振り袖。いつまでも見ていられる程うっとりした

かといって私にできるのも、「若い子達のこの先の人生に、より楽しいことがたくさん訪れて欲しい」と願う事位なのだけれど。

私自身はというと、成人式を楽しみにしていた20歳だったし、20歳で着た振り袖にも、強い思い入れがある。

私は成人式のために親に用意してもらった振り袖が、今でもハチャメチャに気に入っている。色味や柄、生地の光沢感。帯などの小物との組み合わせ。着物屋さんで一目惚れした、唯一無二の装い。いつまでも見ていられる程に、うっとりした。

そしてその振り袖を着た自分も、好きだった。自分の見た目にうっとりすることなんて、29年生きた人生において、この振り袖を着ている時だけ。これっきりだ。

いつもはコンプレックスに感じる、小さくて奥二重な私の瞳も、この特別な振り袖にはなんだか馴染んで、むしろ互いの良さを引き立て合っている気すらした。……私は生まれてくる時代を間違えたのかもしれない。和装、最高やわぁ……(しみじみ)。

前撮りでは家族写真も撮った。両親が挙式をしたホテルの写真館で。親戚のお兄ちゃんが結婚した時にも、私はその振り袖を着た。

大学の卒業式では皆が袴を着ている中、唯一私だけが振り袖を着た。友人から「素敵~!」と誉められた時も、私にしては珍しく「ありがとう!これ、気に入ってるの!」と素直に答えられた。

だから私がその振り袖を着たのは、前撮り、成人式、結婚式、卒業式の、計4回である。……たったの4回だ。

和装が大好きだけれど、あまり縁はないようだ

私は22歳で結婚した。振り袖は基本的に、若い未婚女性が着るものだというマナーがあると聞く。その上、私は自分の結婚式の時点で妊娠していたので、その前後に振り袖を着て記念撮影をすることも不可能だった。

私に妹はいないし、親戚の女の子に譲るというのも、現実的ではない。というか、私が手放したくない……。今その振り袖はというと、クリーニングされて、和服屋さんの倉庫で眠っている。

私は和装が大好きだけれど、あまり縁はないようだ。人生で唯一の白無垢を着る機会も逃してしまったし(デキ婚だったから呑み込むしか無かったのだけれど……)。

その上この春、長男の卒園式も、私は妊婦、しかも臨月で迎えようとしている。実家に着物はあるものの、またもや和装する機会は消滅してしまったという訳だ。 というか、例年通りの卒園式が行われるのかすら謎だ。

結婚式にも、最近行ってないなぁ。だから、自分が振り袖を着る機会は愚か、友人が和装している艶姿を見る機会すら失われている……。完全に、慢性的な和装不足だ。

私にとっての和装は、ドレス以上に非日常で、魔法のかかる装いだ

私が次に和装をするとしたら、親族の結婚式か、友人の結婚式になるのだろう。どちらも私が主役ではないけれど、こんなにも私と縁遠い和装なのだから、ちょっと自分から動かないと、和装する機会には恵まれない気がしてきた。

だとしたら、親族の結婚式がある時は親に、友人の結婚式があるのなら新婦やゲストの友人に、話してみてもいいのかも。「私、和装して行こうかな」と。

当然振り袖に関しては、マナーやしがらみでNGが出る可能性が高い。無理ものは無理で受け入れて、せっかくのお呼ばれには、お着物で臨んでみたい。そして、自分の見た目にうっとりするチャンスを得たいのだ。私にとっての和装は、ドレス以上に非日常で、魔法のかかる装いだから。

……主役でもないのに、調子に乗りすぎかな?……確かにそうかも。そもそも日常的に、もっと気軽に和装を楽しめたらいいのに、とも思う。しかしそれは子持ちの主婦にとって、現実味の無い生活スタイルだ。着付けはプロに頼めば、当然お金もかかるからね……。

調べてみると、何やら振り袖の袖を折り込んだり、縫ったりして、訪問着に治すという方法も、あるにはあるらしい。なにそれ興味深い。……え……でも?「柄によっては派手すぎて、訪問着として着ていくシーンは限られます」??……う~ん、和装するシーン自体が限られてるんだけどなぁ……。布地をバラバラにして小物を作るというのも、忍びなさすぎるし……。

そもそも、「袖振り合うも多生の縁」って……。袖が触れて縁が結ばれる現代人、居る?伝統やマナーを重んじるのが大切なのは分かる。でも、「既婚者は着るべからず」というマナーさえなければ、このご時世の晴れの日も、もっともっと華やかになると思うんだけどなぁ。……これは賛否両論(主に否)を生む主張なんだろうけどね。はぁ……振り袖。嗚呼、振り袖。なんて儚い存在なんだろうか……。だからこそ、こんなにも魅力的なのかなぁ。

そしてこのコロナ禍ですよ。今のところ私には、挙式に参列する予定すらないのである。……だから。春に産まれてくる子どもが、もしも私と同じ瞳を持つ女の子なら……なんて妄想位は、してもいいかな?

とにかく、私に振り袖を用意してくれた母に、要相談。