久しぶりに、かがみよかがみに投稿しようとページを開くと、募集中のテーマの中に「わたしと東京」というものがあった。
「東京」と聞くと、ふと会いたくなる人がいる。
小学校の時の同級生。東京の中学校に進学するとのことで、卒業と同時に引っ越してしまった。
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小学3年になる春、父親の転勤に伴い我が家は引っ越しをした。人生で最初で最後の転校をしたのもこの時。転校してきたばかりで右も左も分からない私に、一番最初に声をかけてくれたのが彼だった。名前を忘れないよう、連絡帳の隅にそっと彼の名前をメモした。
残りの小学校生活4年間、彼と遊んで過ごすことが多かったように思う。逆に、あまりにも多すぎて「付き合ってるのでは?」と噂になってしまった程だった。実際付き合ってはいない。
彼のご両親の実家が東京にあるという縁もあってか、東京の中学を受験して見事合格。そのまま進学することとなり、小学校卒業と同時に私たちは離れ離れになってしまった。
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そんな彼と久しぶりに会ったのは大学4年の春。
就職活動の企業説明会で東京に行く機会があり、帰りの夜行バスまで時間があったので一緒に食事をしよう、と私から声をかけた。
小学校卒業以来なので、実に10年振りの再会。
再会した瞬間の、あの胸の奥に感じたものは何だったんだろう。
10年も会っていなければ積もる話はたくさん。お互い弟や妹がいたので、「えっ!?もうそんな歳になったの!?」という話から始まり、時期も時期だったので就活の話もした。マシンガントークは止まらず、帰りの夜行バスに乗る直前まで続いた。
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そこから6年。昨年、東京に遊びに行ったタイミングで久しぶりに彼にまた声をかけて会った。胸の奥でまた何かを感じた。
会わなかった6年の間、私は就職と転職を経験した。彼は大学を卒業後、夢を諦めきれず大学院に進学。教員免許を取得して憧れの先生になっていた。
6年もあればさらに話は止まらない。「ここにあったあれは潰れて、今は別のお店ができたよ」「懐かしの駄菓子屋さんはとっくの昔に潰れてしまった」など……。
6年前と違うのは、仕事の話題もそこに追加されたこと。教員と一般企業、全く違うステージで働いている私たちなので、お互いに知らないことばかり。帰りの新幹線の時間までほぼノンストップで話は続いた。
今でも、東京に遊びに行くとなると、彼に声をかけて会いたくなる。これって一体なんなんだろう?
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経験が乏しい私は、きっとこれがそういう気持ちなのだろうと勘違いしてしまいそうだ。
ただ、彼はきっと、私をただの友人としか思っていないだろう。彼の対象は、たぶん異性ではない。
昔、彼のSNSの別アカウントを見つけてしまったことがあり、彼の対象を知ってしまった。確かに昔から彼は、いわゆる「男の子らしさ」というものからは少しかけ離れていたように感じた。私とよく遊んでいたせいもあったかもしれない、と当時は思っていた。
ただ、そうとはいえ、久しぶりに会った彼は、身体的にもぐっと「らしく」なっていた。胸の奥で何かを感じてしまうほどに。
私をただの友達としてしか見ていない彼。
そしてそんな彼に、どちらともつかない感情を抱きながらまた会いたくなってしまう私。
まるで少女マンガのような展開になり、30歳手前の私は少し恥ずかしくなっている。
ただ、この関係は一生変わらないと思っている。というか、変えたくないと思っている。
「関係を壊したくない」というのもあるが、彼の対象が異性でない以上叶わないからだ。
そんな複雑な気持ちになりながらも、私はまた東京に行き彼のことを思う。