私はお風呂が好きではない。

まず、私は顔に水がかかることが苦手だ。小さい頃はシャンプーハットが無いと頭を洗うことができなかった。シャンプーハットを卒業して15年くらい経つが、未だに顔に水がかかるのが苦手なのでお風呂場にフェイスタオルを持って行く必要がある。

また、私にとってお風呂場は恐怖の場所だ。低学年の頃、お風呂のなかで滑って溺れかけたことがある。滑ったときに体のあっちこっちをぶつけ、溺れて大騒ぎしたので家族がお風呂場に駆け込んできた。

私はあまりの驚きにギャーギャー泣きわめき、両親が私をなだめているその様子はまるで地獄絵図だった。

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私はお風呂が苦手なので、温泉に行くことも殆どない。

両親は露天風呂やサウナ、岩盤浴などが好きでよく行っていたそうだが、小さい頃の私があまりにも顔に水がかかるのを拒否するため、行くことをやめたらしい。

もちろん、プールにも行くことができない。水が苦手&カナヅチでもあるからだ。私がプールに入ったら、きっとどこかに流されて消えてしまうだろう。

液体が関わる場所では、私はとんだトラブルメーカーなのである。

でも「お風呂は嫌いで温泉もダメ!プールなんて以ての外!!!」と考えていた私がハマっていたものがある。

それは入浴剤だ。入浴剤があれば、私は喜んでお風呂に入ることができるのだ。

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何がきっかけになったのかは覚えていないが、私は一時期ものすごく入浴剤を集めていた。小学生の頃だ。

バブ、きき湯、バスロマン、バスクリン、日本の名湯の入浴剤…ラッシュのバスボム…泡風呂になる入浴剤…

お手軽な値段のものから高いものまで集めて、毎日のように入浴剤を使っていた。

その頃私は両親に頼りっぱなしであった。私が入浴剤に執着したせいで、お風呂掃除は大変、水道代はかかり、入浴剤にかけるお金も大量だったろうに…

小学生の頃の私は入浴剤に狂っていた。新手の入浴剤モンスターであった。

しかし、一年ほどで入浴剤ブームも過ぎ去り、今は入浴剤を買いだめしておくこともなくなった。

でも不思議と入浴剤を集めていた頃はお風呂に入ることがとても楽しみだった。

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お湯や水が顔にかかるだけでギャーギャー泣きわめき、「お風呂なんて嫌だ!!!」と入浴をボイコットしていたような人間がお風呂の時間を楽しみだと思うなんて、随分と不思議なことだ。

私は入浴剤が溶けていく瞬間を見るのが好きだった。シュワシュワと鳴る音も好きだ。鮮やかな色も好きだ。華やかな香りも好きだ。

お風呂という空間が、自分の“好き”で埋まっていく時間がとても好きだった。だから、入浴剤に惹かれていったのだろう。

未だに私はお風呂が好きであるとは言えない。20分もずっとお風呂に浸かっていることはできないし、お風呂よりもシャワーでいいや!と思ってしまうことも多い。

でも久しぶりに入浴剤を買って、私の“好き”が集まったお風呂場で一人でゆったりと過ごすのもいいのかもしれない。