私は小さい時あまり朝ごはんは食べない派だったらしい。そのせいかはしらないが背はあまり伸びなかったねと言われる。弟は朝ごはんをよく食べる人だったせいか、確かに背は高いけど。

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幼稚園の時は覚えている限りでは朝ごはんは食べていない。あまり食に興味がなかったのだろうか。

中学生の時は部活動の朝練があるからと、前の日に買い物に行った祖母が買ってきてくれる菓子パンや食パンにバターを塗ったり、チーズをのっけて焼いたりして家で食べていた。少しでも食べるようにしてくれていたんだと思う。それでもあまり食べなかった。

高校生になってからは自転車で1時間弱の学校に通うのが精一杯で、家でゆっくり朝ごはんを食べる暇もなかった。別に食べなくてもいいやとずっと思ってきていたからここでも食べなかった。少しでも長く寝ていたい私は、化粧をして友人との待ち合わせ時間にギリギリ。朝学校に行く途中でコンビニに寄るか学校の購買でパックのジュースとお菓子を買って授業の合間合間で小腹が空いたらつまむくらい。

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その日々の中で一つだけ祖母との朝ごはんの思い出があった。高校3年生になり進路を決める時期。就職をしようとしていた私は就活に励み、夏休み終わりに就職先も決まって気持ちが落ち着いた。

解放された気分の私は学校をサボり気味になった。上手く単位をとれる程度に学校を遅刻したり休んだりするようになった。休んだら1日中部屋に引きこもる。お腹が空いたらコンビニに行くだけ。

それに対して祖母はなにも言わなかった。私が学校を好きじゃないのを知っていたから。そんなある日も学校を遅刻しようか休もうか悩みながら遅く起きた私。多分9時過ぎだったと思う。

リビングで座ってテレビを見ていたら祖母がきのこがあるんだ。今から味噌汁にするから一緒に飲まない?と。じゃあお願いしようかなと作ってもらい椅子に座って2人で味噌汁を飲んだ。お米と少しのお漬物を食べながら。

入っていたきのこはどうやら味噌汁にむいてなかったらしく「あまり美味しくないね」と祖母が笑った。私は「そうだね」なんて言って笑った。でも私の心はすごく満たされていた。

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その味噌汁がなぜだか忘れられなかった。確かに祖母の作る味噌汁は美味しい。他のご飯だって美味しくて私は好きだった。だけど今思えば少し反抗期気味だったしバイトに遊びに明け暮れ家に帰っても夜ご飯を1人で食べたら部屋に戻る。祖母とは2人で話す時間もなかった。味噌汁を2人で飲んだ日が久しぶりにゆっくり話して笑い合った日だった。

祖母が嫌いだったわけじゃない。よくある思春期の特性。遅刻でもいいから行っておいでと祖母に見送られその日は学校に行った。その次の日からはなるべく朝から行くようにした。

無事に高校を卒業した私。就職して結婚した。旦那も朝ごはんはあまり食べない人。だから朝ごはんの習慣もないし作ることもない。けれどもしも旦那が今日1日を過ごすことに後ろ向きな時は私も味噌汁を作って一緒に飲んで背中を押してあげたい。祖母が何気なく私にそうしてくれたように。