2011年からTwitterに登録し始めて、2017年頃から美容アカウントを見るようになった。
普段生活していて接点のないような都会の素敵なお姉様方の美容に対する情熱、知識が詰まったツイートが見られるということで、美容に興味のある田舎のひきこもりティーンの私は勉強そっちのけでスマホにかじりつくように見ていた。

その頃は色が白くなるボディソープを使え、飲む日焼け止めを買え、豆乳を飲め、キレー⚪︎レモンを飲め、⚪︎⚪︎のサプリを飲めといった一企業の商品を強く推奨したツイートが多く、リテラシーなど全くといっていいほどなかった私はその情報を鵜呑みにしては近くのドラッグストアに駆け込んだことを思い出す。
韓国アイドルのような無駄のない、細くて白い見た目がこの世の全てと盲信していたあの頃。今でもその盲信の名残は色濃く私の中に残ってしまっている。

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脂肪燃焼スープ(科学的根拠は不明)、あの子が⚪︎⚪︎をしている間に私は痩せて綺麗になる、ウユクリーム、白玉注射、色素薄い系カラコンなど、美容アカウントを覗いていた者にとっては懐かしく感じるであろうワードが頭に浮かぶ。
筋トレや運動が美容に欠かせないと広まり出したのもその頃だったと思う。無料でできる美容法ということで、筋トレダイエット系YouTuberの動画を見ながらせっせとプランクやスクワットをしたり、足パカ運動をしていた。

パーソナルカラー、骨格診断等のイメージコンサルタント文化がSNSに出現してバズったのも2017年頃だったと記憶している。今ほど対面サロンや肌色診断を受けられるアプリは展開されておらず、自己診断も多かった。
「ブルベは勝ち組、イエベは負け組」のような主観にあふれた根拠のない言説があふれたことによって、当時のうら若き女子たちの心が削がれたことだろう。

2018〜9年頃には美容に加え、整形アカウントが増えてきた(ように個人的に感じた)。
二重埋没法、涙袋ヒアルロン酸やボトックス、医療脱毛など比較的侵襲の少ない施術を受ける人の数が多くを占め、二重全切開、脂肪移植、鼻プロテーゼ等の侵襲の大きい施術を受ける人は今ほど目立たなかったように思う。

その辺りは美容アカウントはアフィリエイト系のダイエットサプリや着圧スパッツをPRするアカウントが増加し、メイクはワンホン、チャイボーグなどの中華系の流行の兆しが見え始めた。
コロナ禍に突入後はオンライン会議で自分の見た目と対峙する人が増え、男女問わずコンプレックス解消のための美容整形施術報告ツイートが増えたように思う。
また、コンプレックスを利用したツイートをするアカウントも出てきて「奥目は盛れないからこの商品を使え」「骨格⚪︎⚪︎と顔タイプ⚪︎⚪︎は負け組」という、アテンションエコノミーのためなのか、それとも意図せずなのか視野の狭い決めつけを行い、多くの人の批判を買った人物もいた。

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「垢抜け」「芋」といった言葉が若者の間で日常的に多く使われるようになった。
でも立ち止まってみると、本来なら十分にそのままで素敵な人物でも「芋」扱いされ、晒されて叩かれるという現状は恐ろしい。
撮り方や機材によるとは思うものの、写真では被写体の魅力は伝わりにくいということを、頂き物の拳程度の大きさのイチゴがiPhoneのカメラに映った途端、通常サイズくらいに小さく写って見えたことによって思い知った。

このまま加速すると、玄人的な写真映えのいい見た目を整形によって手にし、高級ブランドが似合う物質的、金銭的に恵まれたハイソな人間になることが現代の人類の美の終着点ということになるのだろうか。
鋭利な顎、リフトアップされた逆三角形の小顔、大きく脂肪の少ない目頭の切れた目、高くすっきりとした鼻、陶器のような白い肌に憧れる気持ちは、正直痛いほど分かる。

いつの時代も、美にはゴールなんてないのかもしれない。
全て私のXのアルゴリズム上、というだけの話で狭い世界の話でしかない。
ただ、私は窮屈に思えてきて疲れ果ててしまって美容アカウントを追うのをやめた。
「茶色い乳首とくすんだ性器は生きてる証ということでええじゃないか」と思う反面、「お前もピンクにならないか?」と誘われてしまったら、「ええじゃないか」と満足していた気持ちは霧散する。
そういう不安定な心理状態を持った人がこの世界にハマり、抜け出せなくなるのだと推察する。

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美容のモチベがない、お金がないだけの負け犬の遠吠えに聞こえるかもしれない。
誰もが羨むような美貌や大金、高層マンションからの絶景を手にしても自ら命を絶つ選択をしたインフルエンサーもいたし、実際そんな豪華な人生を途中まで歩んだ私の身内も精神疾患になっている。
これからの時代、心の美容が日本中に広まることを願ってやまない。

というデータのない論文ごっこ(ちょっとやってみたかっただけ)にお付き合い頂き、誠にありがとうございました。