「保育園落ちた日本死ね!!!」

2016年2月に待機児童問題を批判したこの言葉が匿名のブログのタイトルだということは知らなくても、当時国会で取り上げられTVでも頻繁に話題になっていたことから聞いたことがある人は多いと思う。

それでは2024年2月。現在の保活事情はどうなっているのか。

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ネットで「待機児童」と検索すると、その数は5年連続で減少していることが分かる。しかも育休を延長するためにわざと倍率の高い保育園だけを希望して「落選」を狙う育休延長の不正利用者が増えており、それを正すための手続きを設けることを政府が検討している、というニュースまで目につく。

「なーんだ。保育園に入れず困っている人は減っていて、むしろルールを不正利用する人が増えてるんだ」

本当にそうなんだろうか?

「保育園落ちた日本死ね!!!」の当時、私は新卒1年目。まだ結婚や子どもについてリアルに考えられなかった。

けれど現在妊娠8ヶ月。「自分ごと」として初めてこの問題に向き合っている今、「保育園落ちた日本死ね!!!」も「育休延長不正利用の是正措置検討」も本質は一緒で、子どもを育てている多くの人たちは今もまだ困っているのだと、身をもって痛感している。

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先述のニュースは私にとってはショックだった。徐々に母親の自覚が芽生えつつある自分自身を否定されたかのように感じたからだ。

私は働くことは嫌いじゃない。むしろ好きだ。自分自身の成長も、社会貢献の実感も仕事を通じて感じられるからだ。

妊娠が分かった当初も望んで授かった命だというのに、喜びの大きさよりも「1年も仕事を離れるのか」という不安の方が大きかったくらいで、「こんな自分は母親失格だ」と悩み、「いつ復帰するの?」という同僚からの何気ない言葉には「なるべく早く戻ります」と即答してきたくらいだった。

でも、胎動を感じるようになり、日に日に大きくなっていく自分のお腹に「ここに子どもがいるんだ」とやっと実感を持って思えるようになった頃から「それが私がなりたい本当の私なのか?」と疑問に思うようになってきた。

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周りから見るときっと健康な妊婦に見える私も、人知れず貧血になったり不正出血をしたり、それらを隠して仕事をしながらお腹の子どもを今日まで必死になって守ってきたのだ。

早くこの手で抱きしめたい、成長の過程を全てこの目に焼き付けたい…そう思うようになればなるほど、働くことはエゴなんじゃないかと、自分が嫌になることもあった。

でもどちらの自分のことも嫌いじゃないのだ。働くことが好きな自分と、母親の自分をなんとか両立させたいと、やっと気持ちに折り合いをつけはじめてきた頃に目にしたのが、この「育休延長不正利用の是正措置検討」のニュースだった。

このニュースを見て感じたのは、ルールの不正利用は悪だということは大前提として、「十月十日守り抜いた子どもの成長を自分の目で少しでも長く見たいと思うのは悪いことなのだろうか?」ということだ。

私自身は、現実的に働かないとご飯を食べていけないので、ルール通り子どもが1歳になるまでに保育園に預けられるよう保活をしているが、もし金銭的に問題がなく育休の延長が誰でもできるというのであれば、きっと延長を希望すると思う。

それに「わざと落選を狙っている人」と、「通える範囲に倍率の高い園しかなく、そこしかない人」をどうやって見極めるのか、それがこのニュースから私には分からなかったのだ。

倍率、つまり、保護者からのその園の人気・不人気にはそれなりの理由があるはずで、例えば不人気の理由が立地の問題ならばこちらの努力次第だけれど、人や保育環境の問題ならば一体どうすればいいというのだろう?

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人手不足や管理がずさんな保育施設での痛ましい事件をニュースで知るたびに、もしうちの近所がこんなところばかりだったら…と想像しては、まるで仕事と子どもの命を天秤にかけさせられているような気持ちになる。

私個人の話を一つ例に挙げる。実は最近、自宅から一番近くて立地のいい公立の認可保育園が民間委託されるということを、保活を通して初めて知った。しかも切り替え時期がもうすぐそこまで迫っているというのに、まだその委託先は決まっていないのだという。

妊娠前までは「子どもができたらここに通うのかな」なんて考えていたのにこのような現状なので、預け先の候補としてこの園は除外せざるを得なくなってしまった。

これからその他の園にも見学に伺う予定なのだが、これ以上候補から消さざるを得ない園がどうか増えませんようにと、今から不安な気持ちでいっぱいでいる。

預け先がなくて困っていた過去、そして預け先は増えているものの、実態として質が均一化されていない現在。政府には、私たちが「倍率の高い園以外を希望できない理由」についても目を向けてほしいと切に願っている。

私は働きたい。けれどそれは、大切な子どもを安心して預けられる場所があることが大前提なのだ。