今年は今まででいちばん、特別なバレンタイン。
今までもバレンタインにチョコレートのお菓子を作って友達や家族、部活の先輩や恋人にあげたことはあったけれど、それでも今年はいつもと違う。
それは今の恋人の存在。今までも誰かと交際することはあったし、交際期間中にバレンタインを迎えたことはあった。でもそれは単にみんな周りがやっているからとりあえず私もチョコを渡しておくか〜、くらいの軽い気持ちで、本命チョコなんて大層なものではなかった。中高生の時は比較的いまよりも自由な時間も多かったし、小学生なら尚更だ。元々お菓子だけでなく何かを「つくる」という行為が好きだった私は、バレンタインという行事を楽しんでいる側の人間だったのだと思う。
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今交際している人は今までの恋人とはいい意味で違った感情を抱き、違った関係を築いていると思う。彼も、彼自身で私のことを好きだと伝えてくれた。私は自分のことを好きでいてくれる人が好きなので、例によって彼を受け入れた。
彼は今までの恋人と比べられないほどに、私を愛してくれた。私はどちらかというと男の人受けする性格ではない。どちらかというと同性に好かれていることが多いと恋愛に関しても感じていた。
今の交際相手は、そんな私をずっと好きでいてくれる。愛してくれる。私の芯のあるところ、考え方が好きだ、メイクしてない顔も、メイクした顔も大好き、全部が、好きで愛してると言ってくれる。ここまで、私のことを考えてくれて私のことを愛してくれる人と交際したのは初めてで、彼が私を好きになってくれればくれるほど、私も彼のことを好きになっていった。綺麗な景色を見たときに、彼に見せたいと思うことや、美味しいものを食べたとき、彼の好きな食べ物を見つけたとき、一番に彼の顔を思い出して連絡したいと思うこの気持ちが愛なのではないかと思う。私は恋愛というものを全くと言っていいほど理解していないが、これが愛だといいなと思う。
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彼は私によく料理を振舞ってくれる。今年で社会人1年目の私は忙しさに追われてなかなか手作りのスイーツを作る時間が持てなかった。仕事で疲れて家に帰って寝る。休みは休みで何らかの予定が入るため想像していたよりも時間がない日々。
それでも、彼が私の手料理をいつか食べたいと言ってくれたのを思い出して、どうにか作ろうと時間を捻出した。
何を作ったら喜んでもらえるかな、ラッピングはどうしようかな、なんて、たくさんたくさん考えた。だけど、運悪く生理が被ってしまった。
私は生理前の気分的な症状の重さに加え、生理痛もかなりひどく病院に頻繁に通っているほどだ。
本当は彼とのデートの前日に作る予定が、生理のせいで狂った。仕方がないから、デートの日に早起きして作って、ラッピングもしてしまうか、とも考えたがそれも難しそうだ。手作りをしようと意気込んでいた手前悔しいが、デートの待ち合わせ時間よりもずっと早く街に出て、美味しいお菓子屋さんでチョコレートを買おう。そう考えていた。
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でも、それもできなかった。デート当日の朝は幾分ましになったとはいえ腹部の痛みはあり、それよりも意味もなく苛立ちがすごく、彼からきた些細な言葉に対しても苛立ってしまう。普段はなんとも思わないことでも、生理前、中はどうしても世界の全てに苛立ってしまうし、そんな自分が嫌で悲しくなり情緒不安定になる。
薬を飲み落ち着くために仮眠を取ったがそれが良くなかった。30分だけ寝るつもりで、アラームもいくつかかけていたのに、起きたのは待ち合わせ時間の30分後で、彼からは私を心配する内容の連絡が入っていた。
泣きながら待ち合わせ場所に向かった。彼は優しく迎えてくれて、心配してくれて気にしなくていいよ、僕も遅れたことあるし本当に気にしないで、体調しんどいよね、と言ってくれたがどうしても私が自分自身が嫌で許せなくて、チョコのひとつも用意できなくて、予定通りに行かなくて涙がなかなか止まらなかった。
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結局生理の症状が落ち着いてきた別の日に、チョコレートを作った。学生の時とは違い、社会人には時間がない。もちろん時間に余裕のある人も世の中にはたくさんいるのだろうが、新卒1年目の私は、仕事をしながらはじめての2月を経験するわけで。寝て起きて仕事の日々にチョコレート作りというイベントが入ってきた。言い訳になってしまうのだが、本当はもっと私はお菓子作りが上手なのに、自分の中では完璧で満足!といえる仕上がりではなかった。それでも味は良かったし、中でも一番うまくできたものを可愛く心を込めてラッピングした。
あまり上手にできなくて、しかも遅れちゃってごめんねと言い訳ばかり重ねながら彼に渡したチョコレートだったが、思っていた何倍も何倍も喜んでくれた。写真まで撮ってくれて、毎日少しずつ大事に食べるね、ああ、でも美味しすぎてもう全部食べたいな、本当にありがとう、すっごく美味しいよ、嬉しい、また食べたい、ホワイトデー期待してて、大好き、とたくさんたくさん褒めてくれた。
美味しかったし、バレンタインをもらえて嬉しかったというのもあるけれど、忙しい中僕のために頑張って作ってくれたのが本当に嬉しいんだよ、と言ってくれた。
うまく言えないけれど、私はやっぱり彼がくれるこの言葉が愛なのだと思う。そして、心に余裕ない中で彼のことを考えながら作ったチョコレートも、私がこの日々までに抱えた気持ちも愛なのだと思った。日にちはバレンタインデーから少しだけ遅れてしまったけれど、今年のバレンタインデーが私の人生で一番、愛に溢れたものだった。