平成5年5月5日生まれの私は、令和5年5月5日に入籍した。
私の意思を尊重してくれた今の夫が叶えてくれた大切な日。めでたいオール5の記念日。夫は少しだらしないところもあるが、とても優しいのだ。
でも、世間の目はどこか冷たい。
それは私が結婚前も結婚後も変わらない姓を名乗っているからだろうか。
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夫とは、本当はもう少し早く入籍して結婚式をあげる予定だった。しかし、新型コロナウイルス感染症が蔓延して、なかなか結婚式をあげることに踏み切れなかった。そして、もう一つ気がかりだったのが姓についてだ。
私は学校で非常勤講師、塾で講師、被写体と掛け持ちの仕事が多く、名字で呼ばれることが多かった。だから、私は自分の姓を名乗り続けたかった。しかし、入籍すると夫の姓を名乗ることが主流になっている。
ニュースで、夫婦別姓について協議されているところを目にしたが、結局日本は夫婦別姓にはならなかった。夫婦別姓が実現されないのは、家制度や別姓にすると家族の一体感が薄れると考えられているからだという。
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家制度にも違和感がある。でもそれ以上に、家族の一体感が薄れるという考えにモヤモヤとした。家族の一体感の有無は、個々の感じ方の違いだと思う。私が夫の姓になっていたら、自分と家族との一体感が増した、とは思わない。むしろ、自分の姓を名乗れなくなったことの不満がずっと付きまとっていたと思う。
私は掛け持ちで働いて、貯金額だってしっかりしている。大黒柱が夫になるなんて思っていない。私と夫は共に働き、共に協力し生活する、対等な立場だと思っている。だから夫の姓も妻の姓も対等な関係、できれば別姓にすべきだと感じている。でも、日本はそうはいかない。夫婦別姓が認められていないからだ。
結婚に踏み切るとき、すごく悩んだ。
夫は「わかがそうしたいなら、わかの姓にするよ」と言ってくれた。でも、夫の家族がそれを許してくれるとは限らない。夫の家族に納得してもらうにはどうしたらいいのだろう。そんなことを何度も悩んだ。
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仕事のことや、夫の了承を得たことを説明すると、夫の両親に「いいよ」と言ってもらえて、晴れて令和5年5月5日に入籍することができた。
私の母は、申し訳ないことをした気がすると、何度か口にしていた。顔合わせの時も、本当にいいんですか?と申し訳なさそうに話す母の姿に、私も、申し訳ない気持ちになった。これが正しい選択だったのかと迷うこともあった。
けれど、私は夫と妻は対等であると考えている。それなら、妻の姓になることも夫の姓になることも五分五分であるはず。それなのに、どうしてこんなに私は、私の姓にしたことに負い目を感じているのだろうか。
「夏目ちゃんって、結婚したのに夏目ちゃんなの?」
「夏目ちゃん。夏目ちゃんのこの履歴書って詐称?」
「夏目ちゃんの姓にしたの?理解のある旦那様だねぇ」
これだ。私の周りは、私が結婚したにもかかわらず、姓を変えずにいることを、とても特別なものとして認識しているからだ。
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私は履歴書を詐称していないし、結婚してもしなくても夏目は夏目なのだ。理解のある夫だということは認めるけれど、もし、男女逆の立場だったらこんなことを言われただろうか。いや、言われないだろう。夫の姓を名乗ることが主流だから。
でも、私は私のままでいたい。主流ではなかったとしても。
私は、私の姓を名乗り続けたいと思って叶えた。夫を説得して、夫の家族にも許可をとって、私の姓を選択した。周りが奇異な目で見たとしても、私は私の選択が間違っていたとは思わない。
ただ、どうしても、誰かに言われるたびに思う。どこか申し訳ないことをしてしまったと。男女の格差を感じずにはいられなかった。
対等だと自分は思っていても世間は違う。
いつか自由に姓を名乗れる時が来たらいいなと、私は思う。