わたしは、友達が大好きだ。
友達といると、仕事が辛かったことなんて一瞬で忘れられる。
カラオケ、ゲームセンター、洋服屋さん。
友達は、陰キャなわたしが行かない場所にたくさん連れて行ってくれる。
話も楽しい。
わたしと違い、優秀な彼女は仕事でバリバリ成果を出し上司はもちろん、同僚にも尊敬されているようだ
わたしは、失敗しては怒られての繰り返しの毎日なので彼女の仕事っぷりは、別世界の話のようで新鮮だった。勉強にもなった。
◎ ◎
彼女には、素敵な恋人もいる。
180cmは、超える身長、大きな目、清潔感のあるファッション全てが理想でまるで少女漫画からでてきたよう人だ
最近は、二人で箱根旅行に行ったようで、お揃いの浴衣を来て、季節の食材をたっぷり使った料理を食べた写真を見せてくれた。
いろんな知識があり、仕事ができ、プライベートまで充実している彼女はキラキラとまぶしい。
わたしは、そんな彼女が誇りで、大事な友達で週に一回は必ず会いたいと思っていた。
会って彼女にいろんなところに連れて行ってもらい、彼女の仕事の話や恋人の話を聞き、ほんの少し、自分の愚痴をもらす。
それが残業ばかりでボロボロなわたしにとっての唯一の楽しみで幸せだった。
◎ ◎
ある日、友達とノリで街コンに行った
わたしに、彼氏がいつまでたっても出来ないからと友達が連れて行ってくれた。
そうしたら、タイプだ!と直観で思えるような男性がいた。
白い肌、切れ長の目、笑うとくしゃっとなる笑顔、わたしの本能が彼を「素敵」と言っていた。
そんな彼とは街コンでマッチング後、3か月のデートの末、あれよあれよと付き合うことになった。
彼は、3つも年下で、生まれや育ち、好きなもの、嫌いなもの、生活習慣あらゆるものが異なった。けれどなぜか馬が合った。
いつのまにか、毎日会うようになり、気付けば同棲していた。
◎ ◎
陰キャで人の顔色を窺う癖があるわたしだが、彼の前ではありのままの自分でいることが出来た。
繕うことなく、自分のダメなところを見せたり、愚痴を話したり、好きなことは好きと言い、嫌いなことは嫌いと言えた。
話を聞くだけでは無く、自分から率先して話せた。
もちろん、彼に合わせて行動することもあったけれど、嫌なときは嫌と言えた。
彼にわたしの趣味に付き合ってもらい、本屋さんやカフェデートをすることもあった。
そうして彼との時間を過ごしているうちに長いこと友達と会っていなかったことに気付いた。
友達から誘いがきてもそれとなく流していたのだ。
恋愛マジックの中、彼氏ばかりを優先し友達を蔑ろにしていたのかもしれない。
そう思ったわたしは久しぶりに大好きな友達にLINEし一緒にでかけた。
友達は、久しぶりに会ったわたしににこやかな笑顔を振り撒きつつ、止まらぬ勢いで話し始めた。
◎ ◎
「久しぶり〜、最近さ、仕事で、上司の尻ぬぐいまでしちゃった。あの上司マジで使えないからさ。わたしが仕事のフォローしたの。ヤバくない?」
「彼氏がさ〜、誕生日にセリーヌの財布買ってくれてさー、ヤバくない?わたしいらないって言ってるのに、ほんとわたしのこと好きすぎるんだから」
「この前なんて、銀座のお寿司食べさせてくれたんだよ~、ね~、これ見てインスタにアップしたんだけどさ、1人1万円超えだよ?めっちゃおいしかったよ!」
「●●(わたし)の彼氏の写真見せてよ!うわー、身長低くない?わたし身長170cm無い人ムリなんだけど~」
「今日は、渋谷で買い物してアフタヌーンティー食べるでいいよね?」
わたしは、いいようもない程家に返りたい気分になった。
早く、彼とくだらない話をして笑いたい。
◎ ◎
あんなに大好きで毎週心待ちにしていた友達との時間のはずなのに、なんだか苦しく思っていることに気付いた。
今まで自然にできていた友達を褒める行為がとてつもなく億劫だった。
言葉がでてこず、わたしはすごい勢いで話す友達にうなづくことしかできない。
そこでわたしは気付いた。
わたしは、友達を自分の孤独を埋める道具として使用し、友達は承認欲求を埋めるための道具としてわたしを利用していたのかもしれないと。
わたしには、もう友達はいらないと。