私の、忘れられない春の思い出は、中学3年生の春の出来事だ。
中3の春と言えば、まさに今直面している人も多いだろう。
そう、高校受験だ。
中学受験を経験していない多くの人にとっては初めての受験。
目眩がするような過去問の山、胃痛に耐えながら先生と対峙した面接練習、いつもと違ってピリつく教室の雰囲気……。
そんな受験真っ最中のあれこれも当然記憶には残っているが、私の思い出はさらにその後、『合格発表』にまつわる出来事だ。

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私は、高校受験の合格発表を、父親と2人で志望校まで見に行った。
本当は母親と一緒に行きたかったのだが、母親にどうしても外せない用事ができてしまい、父親に白羽の矢が立ったのだ。

思春期真っ只中だった私は、父親と2人で合格発表を見に行くということ自体不服だった。
しかし、もし合格していれば、そのまま会場で行わなければならない手続きもある。
さすがに1人で行くのは、ということで仕方なく父親と会場に出向いた。

そして待ちに待った合格発表の瞬間。
人混みの中、必死に背伸びをして、掲示板の中から自分の受験番号を探す。
それは、自分の受験番号に近い数字まで辿り着いた…!もうそろそろ…!と思った時だった。

「あ、合格してるじゃん。手続き行こう」

隣から聞こえた父親の声。
えっ、私まだ見つけてなかったんですけど……そんな思いもつゆ知らず、歩き出そうとする父親。
そう、これが私の忘れられない中3の春の思い出、『合格ネタバレ事件』だ。

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流石に「ちょっと待って!」と父親を静止し、自分でも番号を見つけた。
合格したことには代わりないし、もちろんとても嬉しかった。
同行できなかった母親にもすぐに連絡して、家族みんなで喜んだ。
とはいえ、だ。
人生の分岐点になると言っても過言ではない合格発表。
やはり自分の目で探して、見つけて、喜びたいものじゃないか。

それがまさか、父親が先に見つけて、父親の口から合否を聞くことになるなんて。
今となっては笑い話だが、当時の私は、父親にネタバレされた悔しさや怒り、合格した嬉しさや多幸感の両方の感情に挟まれ、何とも言えない気持ちになったものだ。

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受験の出願や手続き、合格発表がネットで行われることが増えてきたこの頃。
もしかして学校に掲示される形式の合格発表は今では主流ではないのか…?と疑問に感じ、母校のホームページを確認してみた。

私の母校では、今年も学校の玄関前に結果が掲示されるらしい。
きっと今年も、たくさんの人が親子で合格発表を見に行くことだろう。
だからこそ、私は声を大にして伝えたい。

受験生のみんな!
合格発表は短期戦だ!決して遅れをとらないよう、血眼になって受験番号を探すんだ!

同行してあげる保護者のみなさん!
我が子より早く受験番号を見つけても、決してネタバレはしないでください!寛大な心で、子どもが自分で見つけるのを待ってあげましょう!

こんな私の春の思い出と、何のこっちゃというような助言を添えて。
今年の受験生に幸多からんことを願って、このエッセイを終わろうと思う。