ときめきに素直でありたい。
私が死ぬまで掲げ続けたい目標のひとつだ。

実家では、かわいいと思って買ってきた服に呆れた顔で「変だよ」と言われたり、ちょっとアイメイクのラメを多めにしたら気持ち悪いと言われたりすることがよくある。

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自分の好きなものに素直でいる姿勢が全力で肯定される世界に出会ったのが、約2年半前記事を投稿した、オールガールズオーケストラであるオーケストラ・ファムファタール(通称:強い女オケ)だ。
強い女オケの参加条件は、「強い女になりたい人」である。各々が一番「強い女」であれる衣装やメイクで、「強い女」たる演奏をする、というコンセプトだ。

昨年末、第3回強い女オケの演奏に参加した。
「自分の好きだと思った気持ちに素直に、己の運命を己の手で選んでいく人になりたい」という思いを胸に応募をした。
参加が決まると、奏者間で「衣装どんなのにする?」という話題が出てくる。もちろん楽しい話だが、重要な話でもある。
私は何を身につければ、強い女になれるんだろう。強い女ってどんなものなんだろうか。一人ひとりが自問する。

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自分の好きだと思った気持ちに素直であることは、実家・地元では度々抑圧されてきた。
この強い女オケでは思いっきりそれを解放して、遠慮なく楽しもうと決めていた。

ときめきの一着に出会ったのは、大阪・阿倍野の路地裏にひっそりとお店を構える古着屋さん。
原色を何色も使った柄のワンピースとか、スパンコールのドレスとか、地元では見たことのないラインナップの店内に胸が高鳴った。
こっちを見てきたのは、アニマル柄の生地にラメがギラギラに施されたジャンプスーツ。
手を伸ばすのに勇気がいる派手さだったが、同時に、目を逸らすことができない魅力だった。

これを着たらどんなに強い自分に出会えるだろうと想像した。

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小さい頃から大学生になるくらいまで、親のこだわりで着る物が決まっていた。
幼稚園の頃、みんなが履いてるプリキュアの靴下を私も履きたいと言って却下された。その後も何かにときめく気持ちは、しょっちゅう宙ぶらりんになっていた。

今、私のときめきを私が叶える時だ。
このアニマル柄ギラギラジャンプスーツと私なら、きっと本番のステージで強くなれる。そう確信した。

演奏会当日、それぞれにとっての一番強い女が、ステージに集った。練習の時から舞台裏まで仲間たちと、衣装や演奏へのこだわりを話したりした。
みんなが強い女を目指す気持ちを持っていることが感じとれた。強い女になりたい気持ちを、その人その人にとっての強い女像を、誰もが否定しない場だった。その一員であることを誇りに思った。

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ステージライトが衣装のギラギラのラメを華やかにする。輝きを放つ自分に気づいて、緊張は凛とした集中に変わった。
みんなのときめきの中に、私のときめきも混ぜて演奏ができたと思う。ここはこんな風に演奏したらきっとめちゃくちゃいい!という、持てる限りのときめきを出し切ることができたと思う。
ベートーヴェンの交響曲第九番「合唱付き」のアンコールを終えた私は晴れやかな気持ちだった。自分の最大限にときめき素直な姿を、900人ものお客様に観て、聴いていただけた。

ステージを降りて、私たちは日々に戻っていく。
私はこのステージで、これからもときめきに従って生きていきたいと強く思った。
毎日色んな不安はあるけど、好きな曲は聴こう。実家の犬は愛でよう。あったかいお茶が心を溶かす感覚を味わおう。
そのうちもっと元気になって、大きなときめきに出会って、全力で追いかけたい。
健やかなる時も病める時も、なるべくときめきに素直に、そして敏感に。

親に見られたら「あんた、何これ?」とびっくりされちゃうかもしれないアニマル柄ギラギラジャンプスーツは、大事にしまっておいた。