一番好きな家事は(料理だけど、一番スリルがあってワクワクする家事は)洗濯である。

両親が共働きの一人っ子なので、家事は小学生からやっていた。最初は洗濯物を洗濯機から取り出して畳むとか、自分の分の食器は自分で洗っておくとかだった。

本来の一番好きな家事である料理を本格的に担うようになったのは10歳の頃。電子レンジやピーラー、こども用の包丁を駆使して、レシピ本とにらめっこしながら奮闘したのが始まりだ。数年も経てば包丁を使いこなせるようになり、レシピ本を見なくてもおいしい料理をつくり出せるようになった。

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料理に関する印象的なエピソードはいくつかある。家庭事情が複雑で満足に食べられていなかったクラスメイトにお弁当をつくって持っていったこともあったし、高校の最後の登校日には仲良しグループで持ち寄りパーティーをした。第一志望の大学の受験当日は自分のためのお弁当を詰めた。眠れない夜に突然思い立って捏ねたパンを翌朝に焼いて食べた。

これだけ料理に思い入れがあっても、一番好きな家事を訊かれたときは洗濯と答える。これには、わたしの家族の生活が大きく関わっていると思う。

わたしが大学に進学し、家を出る時間も帰る時間も以前よりまちまちになった。一人娘がいよいよ手を離れたと感じたのか、母親は人生における仕事の割合を増やした。パートタイムからフルタイムに戻したのだ。そういうわけで、フルタイム勤務2人と、そこそこ忙しい学部の大学生1人になった我が家は、大人3人のシェアハウス的な様相を呈している。

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そんな我が家の洗濯事情はちょっと、いやかなり変わっている。月曜日の朝、ホワイトボードに書かれた曜日ごとの枠の中に自分の名前を書いて、その週の当番を決めるのだ。どうしてもの事情がある場合は考慮してもらえるけれど、基本的には早い者勝ち。正直一秒でも長く寝たいし、月曜日というだけで憂鬱で起きたくない。

でも、起きたら待ち受けているこのシステムは楽しい。もちろん各々お気に入りの枠というものも存在しているけれど、そんなものはお構いなしに早く起きた人から希望する枠に名前を入れる。早く起きなくてはいけない日のしんどさは、ほぼ確実にお気に入りの枠を手に入れられる小さな喜びとセットなのだ。

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どうしても憂鬱になりがちな月曜日にこのシステムを導入したのは母である。わたしは母にイライラをぶつけられた記憶が一度もない。幼い頃は特に何も感じてこなかったけれど、20を超えた今、母は自分の機嫌をとるのが抜群に上手な人なのだと痛感している。洗濯すらゲームのようにして、自分自身の機嫌も家族の機嫌も取ってしまうんだからとんでもない人だ。

いつかわたしが両親以外の人と暮らす日が来たら、この洗濯当番システムの話をしたい。あわよくば、一緒に楽しんでやってくれる人と一緒にいたい。家事は生活で、やる人それぞれの性格が如実に出るものなのだと思う。その考えをくれたから、わたしは洗濯が好きだ。