私と母親。
近いようで1番遠い存在。
私は、母の初めての子として生まれ、育てられた。
母にとっても、私に起こる全てが初めての出来事。
◎ ◎
入学式や卒業式、受験や就活。
私に起こる、様々な人生のイベントはもちろんのこと、日常で起こる様々なことで、幾度も壁にぶつかった。
初めてゲームセンターへ友人だけでプリクラを撮りに行きたいと言った日。
一言で「だめ」と言われた。
門限が20時までで、周りの友人との差に、「どうしてうちはだめなのか」と反抗した。
初めての定期試験。
成績優秀だった母の基準で見られることが多く、80点以上取れるのが当たり前という母の基準とできない自分の乖離に悩んだ。
初めての受験では、中堅校にも届かず第一志望に落ちた。
この頃から、両親に申し訳ない気持ちと、母に対して負けたくないという気持ちが芽生えた。
私から見える母の人生は、何もかもが成功しているように見えていたからだ。
立てた目標は、達成していて目標の学校に入り、就職して結婚して、順風満帆。
その反面、私は受験や就職で自分の目標を達成できたことがなく、母には、私の気持ちなんて分からないという投げやりな気持ちが強くなっていった。
母の言っていることは正しくもあったけれど、母のいう正しいレールからはみ出ると「私はできないんだ」という自己肯定感の低さに繋がった。
10代から20代前半は、母の理想に近づくことができないことに窮屈さを覚え、自分の本当の気持ちを隠すようになった。
◎ ◎
社会人となり9年。
1人暮らし、転職も経験し、自分の力で生きていくようになってから母との距離感も物理的に離れた。
あまり干渉されることを好まない私の性格を知る母は、自立してからは何も言わなくなった。
優しいというより、厳しい母と私は合わないと思うことが多かった。
母を超えたいと思っていたけれど、離れて暮らすようになってから、その厳しさも大きな愛で、母も私に起こる様々な出来事が初めてのことばかりで一生懸命ぶつかっていたんだと今では思う。
◎ ◎
「母と娘」。
近いからこそ関係構築がとても難しい。
初めてのことづくしに戸惑いながらも私を育ててくれたこと。
結婚の早かった母にとって、自分の時間よりも私や姉妹、家族のため全ての時間を費やしてくれたこと。
何度もぶつかったし、ひどいことも言ってしまった。
それでもいつでも味方でいてくれたことは確かで、迷いながらも初めての子育てでも母なりに迷いながら、育ててくれたこと。
そんな母が今、趣味を見つけ、楽しんでいる様子が今の私にとって嬉しいこと。
母と娘の関係に正解ないけれど、母娘として一緒に暮らしたあの時間は、とてもかけがえのない時間だった。
この夏、私は新しい家族を作る。
母から受けた愛と、私の伝えたい愛を持って母に負けないくらい素敵な人生を歩みたい。