他の人にとって母親との記憶って、どんなものがあるのだろう。
このテーマをもらってから、何を書くのかひたすら考えてみた。

そりゃもちろん、私の中では幸せな思い出はたくさんはあるのだけど。
私の中にある、根源的でとても幸せな母との記憶ってなんなんだろう。
そして、一つの記憶について書いてみることを思いついた。

そう、「夢の国」について書こう。

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「夢の国」をみなさんはご存知だろうか。そう、「ディズニーランド」である。
門を一度くぐれば魔法が溢れる素敵な空間で、思わず顔が綻んでしまう。
誰もがなりたいものになれて、心が弾んで目がキラキラしてしまう場所。
「特別な日」でなければ、行けない場所。

きっと他の人は友人と行ったり、大切な誰かとデートに行った思い出が大半なのではないだろうか。

もちろん、私にもそんな経験はあるけど、母に連れて行ってもらったディズニーランドが一番思い出に残っている。
特別じゃない日を、「特別な日」に変えてくれた記憶。

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幼い頃の私は、家にいるより保育園で過ごす時間が長い子だった。
生まれてから半年ぐらいで預けられて、迎えにきてもらうのは大体夕方。
他の子がどんどん帰っていく中で、ちょっとだけ一人、残ってしまうこともあった。

もちろん当時の私にはそれが普通だったし、先生方にもとても可愛がってもらったので、全然寂しくなんて無かったんだけど。
だって、母には詳しくはわからないけど毎日「お仕事」があって、離れていても頑張っていることは、子供なりに理解していたから。

でも、夕日を背景に、迎えにきた母親と先に帰ってしまう友達の背中を見送るのは、ちょっと取り残された気持ちになったことはあったかも…。

「ママ、まだ来ないかな…」

ちょっとしょんぼりして、保育園の廊下に座って、園の出入り口を見ながら、いつまでも母が来ることを待っていたこともあった。

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そんなある日、母が急に早く迎えにきたことがあった。
あれは、4歳ぐらいだっただろうか。
いつもは必ず18時を過ぎるのに、17時前には迎えに来てくれたのだ。

いつもとは違う時間に迎えに来たので、びっくりする私。

「ママ?なんで今日は早いの?なんかあったの??」
「ん?今日はいいところに行こうかな〜って思って!」

そして、園の外に出てさらにびっくり。
いつもは自転車で迎えに来るのに、今日園の前に停めてあるのは、我が家の車なのである。

驚く私に母はこう言った。

「今日はね〜、ディズニーランドに行ってみようかな〜って!」

その言葉で私の顔が満面の笑みになったことは、言うまでもない。

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ディズニーランドに着いてからは、私は存分にはしゃいで遊んだ。
いつもは買うことのないグッズも、ぬいぐるみも、たくさんのアトラクションも、ポップコーンも、パレードも見るもの全てに目移りして、終始ドキドキしてしまう。

母の手を引いて、行きたい場所まで次々と引っ張っていく。

ご飯も「あれが食べたい!」「これもいい!」なんて、たくさんのリクエストをしてしまった笑

いつもは忙しい中で母を困らせてしまうから言えないわがままも、この日は思いっきり言うことができた。

ちなみに、この時初めて乗ったスプラッシュマウンテンでは、怖すぎてびしょびしょになりながら泣いてしまったけど笑

そして、楽しい時間はすぐ過ぎる。遊び疲れてもう終わりがけの時に、母がこう言った。

「ママね、またこうやって来れるように頑張る。いつもありがとう」

その時の母が握ってくれた手の感触は、今でも忘れられない。

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今思えば毎日仕事に邁進しているとは言え、子供には少し寂しい思いをさせているという気持ちがあったのかもしれない。
世の中でバリバリ働いている女性には今よりも風当たりが強い時代だったから、心無い言葉も言われたりしただろう。

それにフルタイムで働いていたから、時間を早く切り上げて帰るのも大変だっただろうと今では理解できる。

他の友達みたいに早く迎えには来れないけれど、それでもこうやって、工夫してたまには一緒に楽しい時間を作ることはできる。

「他のママとはおんなじじゃないかもしれないけど、それでもいい」そう思えた日だった。

アフターシックス(18時からの入園チケット)で入ったから、そこまで長い時間では無かったけど、それでも私にとっては魔法のような時間だった。

この日過ごしたディズニーランドの記憶は、「母と私の二人だけの時間」として大切に私の中に残っている。

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仕事も家庭も子供も諦めない。

これは私の中でいい意味で欲張りな母のことを尊敬する、根源的な記憶だったと思っている。

家のことと仕事の両立に悩まされるこの歳になって、改めて母の凄さを知ることが増えた。やはり、母は偉大なり笑

ディズニーランドは特別な日に行くのもいいけど、特別じゃない日を「特別な日」にすることだってできる。いつか子供ができたなら、私も特別じゃない日を「特別な日」にできる親になりたい。その日まで、見守っててね。