わたしには墓場まで持っていくつもりでついたウソがある。

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わたしの家庭は、どちらかというと厳しい家で、ルールがいくつかあった。

その中のひとつに、小学生のときから、遊びに行くときは「いつ・どこで・だれと遊ぶか」をお母さんに報告しなければならなかった。お母さんはわたしが報告した「○○ちゃんと△△へ行く。ご飯はいらない」などを手帳のカレンダーにメモしていた。

それは中学校、高校、大学と実家暮らしの間続いた。

周りの友人に何度か、遊びに行くときに親にこういった報告をするか聞いたことがある。ここまで詳細に伝えている家庭はなく、「○日に出かける」や「大学の友人とご飯に行く」程度のことだけ伝えている、という友人が多かった。中には、ご飯が必要かどうかだけを伝えている、という人や特に言わない、という人もいた。

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まだ付き合ってもない異性と、ご飯や遊びに行くことを伝えるのは、根掘り葉掘り聞かれて面倒だと学生時代のわたしは考えていた。そんなときは「○○の映画を△△ちゃんと観に行く」と、遊びに行く人物を女友達に変えて、お母さんに伝えていた。

同性の友達と遊びに行くときと、異性と遊びに行くときで服装やメイクを変えるタイプではなかったので、おそらくバレていたことはなかったと思う。

部活の後にご飯に行ったときは「部活の先輩と○○を食べに行く」と伝えたこともあった。男女2人2人で、私以外部活の先輩だったので、詳細に性別を伝えなかっただけで、ウソは全くない。また、異性の部活の先輩と2人でご飯に行ったことがあったが、そのときも「来週の部活終わりに、部活の先輩とご飯を食べに行く」とだけ伝えたこともある。お母さんも"部活の先輩"というは絶対同性だろうと信じて疑わなかったというか、選択肢になかったのだろう。そのときは、性別までは聞かれなかった。

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ちょうどコロナ禍のときに、幼なじみから映画に誘われた。例のごとく付き合う前の異性だったので、テキトーに同性の友達と遊びに行ってくるとだけ伝えた。

そこからご飯や飲みに行ったり、水族館に行ったりもした。全て違う同性の友達と遊ぶと伝えていた。なんなら水族館は遠かったので、車で送ってもらっていた。

何度か会っているうちに、この人から告白された。コロナ禍で同性の友達を遊びに誘いづらい時期でもあり、そこまで好きではなかったが、この告白をOKしてしまった。付き合ってからのデートも他の同性の友達の名前を出して、遊びに行っていた。

わたしの交友関係は、広く浅くというより、狭く深いタイプだったため、名前を出せる同性の友達もいなくなっていた。推し活も忙しくなっていたり、彼氏の言動のモラハラ気味なところも気になっていたりして、告白されて3回目のデートで自然消滅を図ってしまった。

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当時のLINEを見返すと自分のヒドさに驚いてしまったが、短期間で別れたことや今まで会っていたことを伝えられていなかったため、結局、付き合っていたことを家族の誰にも言えず別れた。もちろん、別れて何年か経って新しい彼氏ができたときも、元カレの存在は伝えられていない。小さなウソが重なって、もしかしたら、ウソが小さくなくなってしまったかもしれない。