私と父はよく似ている。
顔も、そして性格だって。
親子でいればたいてい「お父さん似」と言われる。
顔や雰囲気、平均より(やや)高い背、垂れた眉と瞳。
私は鏡を見て、この人の娘なんだなと実感することがとても多い。

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小学生の頃に、教科書に地元の友達何人かと写ったことがある。
実際は1ページしか載らなかったのだけれど、そのとき撮られた写真を大事に机の上に飾っていた。

ある日、母に「どうしたの?お父さんの写真なんて飾って」と間違えられた。
小学校低学年女児として、この間違いは複雑な気持ち。
プロのカメラマンさんに撮ってもらったあの写真は、すぐにしまわれることとなった。

私は成長とともにメイクを覚えるようになった。
目にくっつきそうなぐらいに垂れた眉はサロンで手入れしている。
だから今では顔よりも性格の方がもっと似ているかもしれないと思う。
我が家ではだいたい父と私が一緒のくくりにされる。
そして、私自身もそれに納得している節がある。

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父は趣味人で、休日はよく趣味のために出かけているし、最近は年3回の青春18きっぷを使って旅行に行くほどのフットワークの軽さをしている。
趣味で休日に出かければ母からは「お父さんみたいね」と言われる。
さらにかなりのお酒好き。

気が付くと、新しい日本酒の瓶が増えている(そしてそれをちょいとねだる)。
味の好みも似ているので、父が買う日本酒は外れない。
ゲームだって好きだし、小学生の頃には私や妹と競ってポケモンだってしていた。
少年漫画だって私が買い始めたものをある日その続きから全巻そろえて帰ってきたこともある。

趣味嗜好が似ていると思わされる度、家族なんだなあって思う。

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最近、そんな父が定年を迎えた。
趣味もよく楽しみ、最近では料理をすることも増えた気がする。
少し前と変わらないよねという安心、この日々はいつ終わってしまうのだろうという不安。
父に対して私は時々文句を言いたいときだってあるし、恐らく父だってそうだ。

でも、私は父以外の父を知らない。
私にとって父とはただ一人。
3歳の頃に毎週末江ノ島水族館に連れて行ってくれて、夕食が魚の日には機嫌よく酒を飲んでいる人。

よき父なのか、悪しき父なのかなんて比べられない唯一。
それが私にとっての父。

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社会人になって、いつになったら両親への恩を返せるのかと考えることがある。
同級生のあの子が親とランチに行ったっていう投稿を眺める。
考えている間にでも実家暮らしで今日も受けている恩恵を少しでも返せばいいのに、とツッコミをいれる。

明日からの私は両親にとって今よりよき娘として頑張れるだろうか。
まだまだ甘えるし、迷惑もかけるけれど、ちょっとずつは自立していくから、これからも可愛がってほしいな。